一般臨床家、口腔外科医のための口腔外科ハンドマニュアル’21
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VISUAL SEMINAR : BASIC DENTAL AND ORAL SURGERYChapter1-1Chapter1 口腔外科ビジュアルセミナーSection1ビギナー&ミドルのための必修 ベーシックテクニック 口腔外科の日常診療でもっとも多い外科的処置は抜歯である.抜歯のなかでは埋伏智歯の抜歯の頻度が高く,また難しいと思われているが,難しい抜歯は埋伏智歯ばかりではない.高齢者の残根抜歯を短時間で終われると思って始めたところ,歯根の骨性癒着や肥大があって思いのほか手こずった経験のある読者もいることと思われる. 本稿では,いわゆる“難抜歯”とされる歯を手際よく安全に抜歯するための手技について詳述する.なお,上下顎埋伏智歯や上顎正中埋伏過剰歯の抜歯については,それぞれ本ハンドマニュアルの20181,20192,20203年版で述べたのでそちらを参照されたい.難抜歯とは 鉗子やヘーベルによる通常の操作で抜歯できるものは普通抜歯とよばれる.これに対して,鉗子やヘーベルのみで抜歯することは難しく,粘膜骨膜弁の挙上や骨削除,歯根分割などの外科的補助処置を要する抜歯を難抜歯という.英語ではsurgical extraction,open extractionなどと表現されている. 難抜歯となる歯は必ずしも埋伏歯ばかりではなく,単根歯の正常萌出歯や残根歯であっても,歯と骨の状態によって難抜歯になりうる.「難しい抜歯」という意味では,全身疾患や使用中薬剤のために特別な処置や配慮を要する場合や,開口障害,嘔吐反射があるために抜歯が難しい場合もあるが,本稿では紙幅の関係からそういったものは除き,抜歯すべき歯や周囲の骨に問題があり,抜歯にあたり補助的な処置を要するものについて述べる.難抜歯の要因と術前診査 安全に手際よく抜歯するためには,術前の口腔内診査,エックス線写真診査が重要である.[1]難抜歯の要因 難抜歯となる要因を図1に挙げる.これらの要因の有無について口腔内診査,エックス線学的診査を行って抜歯の難易度を評価し,具体的な抜歯方法について検討する.堀之内康文公立学校共済組合九州中央病院 歯科口腔外科連絡先:〒815‐8588 福岡県福岡市南区塩原3‐23‐1Horinouchi YasufumiDepartment of Oral and Maxillofacial Surgery, Kyushu Central Hospital of the Mutual Aid Association of Public School Teachersaddress:3-23-1 Shiobaru, Minami-ku, Fukuoka-shi, Fukuoka 815-8588難抜歯への対応Tips for Complicated Exodontia46,49頁(使い方:7頁参照)38

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