一般臨床家、口腔外科医のための口腔外科ハンドマニュアル’21
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VISUAL SEMINAR : BASIC DENTAL AND ORAL SURGERYChapter1-1Chapter1 口腔外科ビジュアルセミナーSection1ビギナー&ミドルのための必修 ベーシックテクニックサイナスリフトの定義 1976年にTatumら1によって上顎洞側壁から上顎洞粘膜を挙上し骨移植を行った後にインプラントを埋入する方法が紹介されたのがサイナスリフトのはじめと考えられる.その後,1980年にBoyneとJames2によって側方開窓術が報告された.サイナスリフトの定義に関しては,2007年発刊の“Glossary of oral and maxillofacial implants”日本語版3では,サイナスリフトはMaxillary sinus oor elevationに使われている外科手技を表している誤称とされている.ただ,正式にはMaxillary sinus oor elevation(上顎洞底挙上術)は「拡大している上顎洞,および・または歯槽骨の垂直性の欠損が生じている上顎臼歯部へのインプラント埋入のための増生術式」と定義されており,それは側方開窓術とオステオトームテクニックの2つに分類され,サイナスリフトは前者に相当するものである.本邦における日常臨床でサイナスリフトという用語は広く一般的に用いられていることから,本稿でも側方開窓術に対し便宜的にサイナスリフトという用語を用いることとする. サイナスリフトに関しては,これまでにさまざまな基礎的および臨床的研究が行われている.2008年の「第4回ITIコンセンサス会議」で,サイナスリフトは上顎臼歯部の骨増生を目的とした予知性の高い術式とされている4.サイナスリフトを用いた骨増生の選択基準 サイナスリフトは歯科の日常臨床に広く普及している.実際はわれわれ口腔外科医よりも,いわゆるインプラントロジストのほうが日常的に手術を行っている印象を受ける.図1は1987年にMischらにより提唱された垂直的骨量による術式の選択基準である.当時は3級と4級でサイナスリフトが必要とされていたが,インプラント体の長さの選択基準の変化,インプラント体の性状の向上,クレスタルアプローチの術式や手術器具の改良などさまざまな要因から,現在では4級のみがサイナスリフトの適応になると考える. 図2はSeibertの歯槽骨欠損の分類5で,垂直的お松沢祐介恵佑会札幌病院 歯科口腔外科連絡先:〒003‐0027 北海道札幌市白石区本通14丁目北1‐1Matsuzawa YusukeDepartment of Oral and Maxiilofacial Surgery in the Keiyukai Sapporo Hospitaladdress:Kita1-1, Hondori 14cho-me, Shiroishi-ku, Sapporo-shi, Hokkaido 003-0027サイナスリフトを再考するReconsideration of Sinus Lift52

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