鈴木哲也のよい義歯だめな義歯2
4/7

優先順位をつけて行う咬合採得CHAPTER22-1咬合平面は仮想であるまず、初めに仮想咬合平面を決定する。通常は以下の手順で進める。①上顎前歯部の豊隆(リップサポート)を調整し、上唇下縁に合わせてろう堤の前縁を決める。②カンペル平面が咬合平面に平行であるとの理由から、カンペル平面を二次元的にとらえて、患者の側方から見て鼻聴道線(耳珠の上縁と鼻翼下縁を結んだ線)に平行に、正面から見て瞳孔線に平行になるようにろう堤の高さを調整する。咬合平面設定板をろう堤にあてがって、それぞれに平行になるようにワックスを足し引きして調整する。なお、この作業はかなり面倒で時間がかかる。しかも、ほとんどの人で左右の耳珠の高さは微妙にずれており(図2-3)、厳密には両側で鼻聴道線に平行になるようにろう堤を調整することは難しい。そこで考えよう。このステップで決めるのはあくまでも“仮想”の咬合平面である。しかも、人工歯の咬合面を連ねたラインは平坦ではなく、咬合彎曲を示す(図2-4)。つまり彎曲している咬合面の連なりを平面で代用し、さらに大まかにカンペル平面に平行にと仮想する平面である。仮想であれば、もっと気楽に、おおよその基準の1つとして仮想咬合平面を決めてもよいだろう。さらに、図2-5に示すように、はじめに使用中義歯の前歯部の長さや傾き、臼歯部の厚みなどをチェックし、ろう堤の修正か所の予測を立てておけば決断は速い。以上の準備の後にはじめて咬合床を口腔内に入れ、リップサポートの決定に進む(図2-6)。41仮想咬合平面の決定2図2-3 人の顔は対称ではなく、耳珠の高さは左右で異なる。図2-4 咬合面を連ねた面は咬合彎曲を示す。しかも、咬合採得で決める咬合平面は仮想にすぎない。瞳孔線耳珠耳珠

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る