矯正歯科治療の基本と類似症例が必ず見つかる!ラーニングステージ別臨床例60
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cfStage 1&2(初級編) Stage 3 to 5(中級編)Stage 6&7(上級編)Stage 8&9(リカバリー編)Stage 10(これからの矯正治療編)(上下顎叢生)患者:11歳,女児初診:2002年5月主訴:上下の歯がガタガタしている.症例概要:初診時,3が低位唇側転位していて,上顎のアーチレングスディスクレパンシーは-12mm,下顎は-8mmであった.臼歯部咬合関係は右側はアングルⅠ級,左側はアングルⅡ級であった(図4-27-1).矯正治療の計画,立案を行う際は,抜歯か非抜歯か,外科か非外科かが大きな2つの分岐点で,本症例は叢生量が大きいことと,正面観でオトガイが左側偏位していて顎偏位が推察されることから,抜歯や外科を第一案とするのが一般的である.側貌は上下唇が陥凹していてプロファイルはコンケイブであった(図4-27-2). パノラマエックス線写真(図4-27-3a)では歯数や萌出方向の異常はなく,顎関節形態は左右対称であった.側方セファロ(図4-27-3b,計測値は図4-27-15cを参照)はSNA:79.6°,SNB:79.8°,ANB:-0.2°で,上顎骨劣成長による骨格性Ⅲ級の傾向がみられた.FMA:25.4°でフェイシャルタイプはローアングル,U1 to SN:104.2°,L1 to MP:83.8°で,下顎中切歯歯軸は舌側傾斜の傾向がみられた. 骨格的には上顎骨の劣成長が顕著で,萌出スペース不足の原因の1つに上下顎のV字型歯列弓形態があると推察した.歯科臨床は,患者の満足度が高いゴールを目指すことが大切で,矯正治療の選択肢を説明すると,抜歯や外科処置に抵抗感が強い患者に多く遭遇する.親御さんを含めてカウンセリングを時間をかけて行い,「顎偏位はそれほど気にしていないから歯列不正のみを治してほしい」という患者の要望を踏まえて治療計画を立案した. 具体的には,叢生量は上下顎ともに大きいが,側方拡大によるV字型歯列弓形態の改善,また上下唇の陥凹感に対して若干の前方拡大が可能と考えた.臼歯部咬合関係は右側はアングルⅠ級,左側はアングルⅡ級のため,上顎左側大臼歯部の遠心移動により12mmのスペース不足は改善できると判断した.年齢を考慮すると,急速口蓋拡大で骨格的な側方拡大を行うことも有効と考えられた.診断名:右側アングルⅠ級,左側アングルⅡ級の上下顎叢生,骨格性Ⅰ級,顎偏位症.治療方針:上顎は側方および前方拡大と左側臼歯部遠心移動による叢生改善.下顎は側方拡大による歯列弓形態の変更による叢生の改善.227abde図4-27-1a~f 初診時の口腔内写真.Stage3中級編3-1全顎矯正Case 27Case 27上下顎重度叢生に対する上顎歯列の前方および側方拡大と左側臼歯部の遠心移動,下顎歯列の側方拡大と整直を含めた全顎矯正

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