インプラントの“ヒヤリ・ハット”“あるある”
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 上顎は近心になればなるほど「大口蓋動脈」が歯槽頂に近くなるため、小臼歯より前では口蓋への切開を最小限にする。よく4部や5部での口蓋側への切開で思わぬ大出血を招くことがある。それが術中ならば圧迫止血やレーザーでの止血が可能ではあるが、帰宅後の後出血は患者の信頼を失いかねない。 出血させないような配慮がまず必要であるが、出血させてしまった場合は適切な止血方法を選択することが重要となる。本書の付録「インプラント危険部位マップ」を参考にしてもらいたい。ここでは縫合による止血法を紹介する。ヒヤリ・ハットあるある上顎の神経、血管の走行ソリューション参考文献1.Louie Al-Faraje(著),坪井陽一(監訳),高橋恭久,中居伸行(翻訳統括).アナトミー.インプラントのための外科術式と画像診断.東京:クインテッセンス出版,2016; 38.大口蓋動脈大口蓋神経小口蓋動脈小口蓋神経図2-10 写真のように長年デンチャーを使用した症例では、頬側骨が萎縮してしまい、大口蓋動脈は通常よりも歯槽頂に近くなるため口蓋側への切開により注意が必要である。コラム図2-9 「大口蓋動脈」は小臼歯あたりで急に頬側に寄ってくる。CTGやFGGなどで移植歯肉採取時には特に出血に注意する。加齢により頬側骨が吸収すると歯槽頂が口蓋寄りになり、通常よりも大口蓋動脈に達しやすくなる(参考文献1より引用・改変)。図2-11~13 動脈を切ってしまった場合はこのように出血部位より遠心を、血管を取り巻くように縫合糸を入れて強く結紮し、圧迫することにより止血する。23縫合による止血法

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