インプラントの“ヒヤリ・ハット”“あるある”
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ワンポイント インプラントのセメント固定、スクリュー固定は、ともに利点・欠点を有するが、どちらに優位性があるとは言えない1。しかしながら、セメントの残留は歯周病の既往のある患者のインプラント周囲炎を悪化させる可能性がある2。表9-1 セメント固定とスクリュー固定の比較。参考文献1から引用・改変6図9-3~6 あらかじめインプラント支台の複製模型を製作しておく。補綴装置にセメントを盛りつけ、複製模型に一度装着して余剰セメントを漏出させてから、補綴装置を装着する。製作に使用した模型でも代用可。◇セメント漏出孔の設置スクリュー固定、セメント固定ともに、安定した、最適な咬合を付与できる。咬合はクラウン上に存在するものであり、スクリューアクセルホールの充填材には付与しない。審美的結果は、スクリュー固定かセメント固定かによって左右されない。どちらを用いても同等の審美的結果が得られる。スクリューは強度の低下を引き起こすが、セメント固定に比べてスクリュー固定のほうがより適切な調整が可能である。補綴スペースが不足している場合には、スクリュー固定によるインプラント補綴が必要である。組織のカントゥアの付与、組織治癒、ならびに軟組織のトランスファーがより容易であることから、セメント固定に比べてスクリュー固定のほうにより大きな利点がある。セメント固定インプラントは、セメントスペースが存在することにより歪みなく適合する。スクリュー固定は、スクリューの緩みや破折といった合併症に加えて、寸法の不一致があった際により大きな技術的課題をもたらす。生物学的合併症はセメント固定に比べてスクリュー固定のほうが少ない。さらに、残留物は微生物コロニー化を引き起こすのみならず、組織に悪影響を与える。過去の研究結果より、スクリュー固定インプラントのほうが補綴操作が容易となることが示されている。セメント固定の利点と欠点◇複製模型の作製あるあるソリューション1345咬合審美ポーセレンのチッピング補綴スペースプロビジョナルレストレーションによるスカルプティング歪みのなさ生物学的合併症全般的な合併症、再治療の容易さ、長期的治療計画参考文献1.Hamed MT et al. A Systematic Review of Screw- versus Cement-Retained Fixed Implant Supported Reconstructions. Clin Cosmet Investig Dent. 2020; 12: 9-16.2.Linkevicius T et al. Does residual cement around implant-supported restorations cause peri-implant disease? A retrospective case analysis. Clin Oral Implants Res. 2013; 24: 1179-1184.スクリュー固定セメント固定推奨 2図9-1、2 口蓋側にセメント漏出孔を設けることで、周囲溝内へのセメント流入を防ぐことができる。79セメンタイティス予防例

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