全顎矯正と部分矯正へのアプローチ
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12ab3トラブルトラブルトラブル     昨今アライナーや拡大床などさまざまな対 策矯正装置を用いて一般開業医が矯正治療を行うようになってきた.矯正治療を体系的に学び,検査診断を行いきちんとした治療計画のもとに矯正治療を行うのであれば,まったく問題はない.しかしながら,1日〜2日の矯正セミナーで習った,歯列が狭窄し     痛みに関して歯が動く際の炎症反応によ対 策る痛みと,装置による機械的刺激による痛みの2つがある.歯が動く痛みに関してはまず一時的なものであることを患者に説明した上で,軽く冷やしたりして対応する.痛みが強い患者には鎮痛薬のカロナールやロキソニンなどの投薬を行うこともある.また,イニシャルワイヤーを細いワイヤーにすることで治療初期の痛みを軽減できる.当院では0.12ニッケルチタンワイヤー(カッパーナイタイワイ     矯正治療前に顎関節症の症状がある対 策場合はパノラマエックス線やCTを撮影して,顎関節分類のⅠからⅣのおおよその診断を行う(5章-CASE18-図18-20参照). Ⅲa,Ⅲbの疑いがある場合,MRIの撮影をして,診断を確定する.Ⅲa,Ⅲbは関節円板が前方転位をしているので復位する位置でバイトを採り,MPA(下顎位矯正装置)を作製し調整する.顎関ヤー,オームコ)を使用している.また,除痛目的でセラバイト(図1)を使用することもある. 口内炎に関してはワックスを使用してカバーすることで痛みを緩和させる.すでに口内炎が生じている場合は,炭酸ガスレーザー(ヨシダ)を照射し,フィットシール(ジーシー)でカバーすることで痛みを軽減させる.アフタゾロンといった口内炎用薬の処方も有効である.知覚過敏に対しては,フッ素を塗布する.ていれば拡大床,叢生があればアライナー,などという現象に対して装置ありきで治療を行うと,問題が起きやすい. 難しい症例は専門医に相談し,自分で治療を行う場合はしっかりと腰を据えて矯正治療を勉強する必要があると考える.節症状の改善を待って矯正治療を始める(5章-9,CASE18参照).矯正治療中に顎関節症が発症することがあるが,軽度の場合は経過を観察することが多く,重度の場合はMPAを使用する方法や,咬合面にオルソリーバンドペースト(ジーシーオルソリー)の添加を行って一時的に咬合を安定させることで症状を改善する方法を行う.図1a,b セラバイト(バルビゾン,現在本品は販売終了しているが,代替品がある)(a)を1回5分から10分間タッピングしながら噛みしめる(b)ことにより,疼痛が緩和される場合がある.また,セラバイトは筋肉や顎関節症の痛みの除痛に使用する.310装置ありきの治療をしない矯正治療中の痛み・口内炎・知覚過敏顎関節症(3章-2.顎関節症と咬合治療の関連性参照)

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