QDI 1月
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Learn The Basics of Implantインプラントのための内科学─医師に喜ばれる紹介状の書き方から─はじめに─連載を始めるにあたって─1 「歯科臨床にすぐに役立つ内科学に関する書籍は皆無に近い」と感じている臨床家がほとんどではないだろうか。そうした現状に対して先般、医歯薬出版社より『すぐわかるカード式 歯科治療に必須の全身リスク診断と対応』という書籍1)を埼玉医科大学歯科・口腔外科学教室の依田哲也教授が企画され、筆者も内科医と歯科医師の両側の視点で参画させていただいたところ思いのほか好評を得た。実際、腎臓にかかわる内科医として臨床に携わる傍ら歯科臨床にも従事する身としては、歯科医師に必要な内科学の内容を切り口を変えてアナウンスしていくことがきわめて重要であることを、書籍に参画するなかで再認識した。そんな折、昨年6月8日に日本歯科大学の九段ホールで開催された日本歯科医科連携医療研究会*のセミナー会場にて、当雑誌の編集部より「インプラントに必要な内科学」を題材にした企画を提案された。 それでは、歯科医師にとってすぐに役に立つ内科学の知識とはどのようなものであろうか。結論から言えば、「全身疾患を治療中の患者さんに、インプラントを頂点とした外科処置から歯肉縁下のスケーリングなどのマイナーな観血的処置を行う際、何に注意すべきかを知ること」にほかならない。そのために、各科の医師宛てに紹介状を書くわけであるが、医師の立場から見て、歯科医師からの妥当でわかりやすい紹介状は必ずしも多くはない。 その理由の一つとして重要なのは、医学という体系が歯科医学に比べて完成されておらず、いまだ不明なことが多く、治療法、治療薬、予防法がつねに変わり続けているという点である。すなわち、「昨日の常識は明日の非常識」という世界なのである。医学の歴史をみれば、かつては数十年単位で大きく変化していたことが、現在では3年から5年ごとに訪れている。もちろん、人間の生理学そのものは変化が少なく、捉え方や視点が変わって治療法が多様なものとなってきているにすぎない。加えて、いわゆるパンデミック、流行や耐性菌の問題などは、予測ができないことも少なくない。 本連載では、歯科医師が日常臨床で遭遇することの多い疾患・病態を取り上げ、紹介状を書く目的とポイント、そのために必要な問診の項目を解説していく。さらに、それぞれの疾患概念と病態生理、現在の標準的内科治療について概説する。紹介状を書くうえで疾患概念と病態生理を理解することは必須であり、標準的内科治療に関しては、歯科医師にとっても少なくとも3年から5年ごとに改定された書籍や文献が用意されるべきである。紹介状を書く目的とポイント21)目的が明確な紹介状を書く 医師から見てもらって嬉しい紹介状とは、目的が明確な紹介状である。そして紹介状を書く歯科医師の目的は、第1回 高血圧症(Hypertension)栗橋健夫医師・歯科医師中野江古田病院 内科/東京医科大学病院 総合診療科埼玉医科大学歯科口腔外科特別医局員・医科歯科連携アドバイザーくりはし歯科医院理事長*日本歯科医科連携医療研究会(JSDMC)。ホームページ:http://www.jsdmc.jp/116Quintessence DENTAL Implantology─116

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