QDI 11月
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インプラントリハビリテーションはじめに 多数歯欠損症例において、患者は口腔内にコンプレックスを抱えていることが多い。たとえば、上顎無歯顎においては義歯が落ちてくる心配から大きく口を開けられない患者や、前歯部に審美的な問題を抱えている場合に口唇を閉じ気味にする患者がいる。そのような患者は、インプラント治療以前は、心理的にネガティブな状態であり、大きく口を開いて笑えないなどの弊害も合わせ持っていることが多い。そのような患者に対して、インプラントを利用した固定性の最終補綴物を製作する際、上唇が挙上されないため、補綴物の形状に苦慮することがある。 今回、そのような場面において患者に“スマイルトレーニング”を行い、十分な効果が得られたのでその内容を提示する。“スマイルトレーニング”の開始時期 本稿で紹介する“スマイルトレーニング”は船木純三先生(ふなき矯正歯科クリニック)による方法を使用している。また本来なら、患者に対して最終補綴の形状を治療開始時に提示をするべきであるが、そうしない理由が2つある。1つ目は、多数歯欠損症例の患者は、術前においては早く固定式の補綴物を得ることを強く望み、審美的な部分にまで細かなイメージを持つ余裕がないからである。2つ目は、“スマイルトレーニング”をする段階では、非可撤式のプロビジョナルレストレーションが必要となるためである。総義歯のように落ちてくるような状態ではうまくトレーニングに専念できない。つまり、インプラント治療において、固定式のプロビジョナルレストレーションが入った段階で、患者は細かな審美的な希望を持つようになり、安定した状態で初めて“スマイルトレーニング”に専念できるのである。 多数歯欠損症例において、最終補綴形態を模索する段階によく見られるのが、「上顎前歯を長くしてほしい」という患者の要望である。患者は若年時にはスマイル時には上顎前歯がよく見えたはずであるが、加齢や歯に対するコンプレックスでより上唇が上がらなくなり、上顎前歯がまったく見えなくなってしまう。そのような場合、患者の言うとおりに上顎前歯を長くすると、咬合のバランスにも悪影響が出てしまう。そこで、1.患者に上顎の歯が見えないのは短いのではなく、上唇が上がらなくなっていることを教える。2.“スマイルトレーニング”によって改善できることを伝え、現状の口元と目指す口元を示す。3.期間を決めて“スマイルトレーニング”を実践する。 以上を行う。インプラント補綴のための“スマイルトレーニング”1988年 日本大学松戸歯学部卒業1992年 水口歯科クリニック開業2001年 歯学博士取得2009年 水口インプラントセンター開設日本インプラント臨床研究会(Clinical Implant Society of Japan:CISJ)研修会委員会委員長、DentalXP エキスパートプレゼンター水口稔之 Toshiyuki Mizuguchi2008年 国際口腔インプラント学会認定歯科衛生士取得2008年 国際口腔インプラント学会インプラントコーディネーター取得2009年 水口インプラントセンター新宿主任衛生士2010年 日本口腔インプラント学会専門歯科衛生士取得2014年 日本口腔インプラント学会においてヒューフレディ賞受賞畑岡いづみ Izumi HataokaIzumi HataokaToshiyuki Mizuguchi45─Vol.21,No.6,2014917

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