QDI 11月
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裁判例から学ぶインプラント医事紛争の傾向と対策技術過誤が認められた事例の経緯技術過誤が否定された事例の経緯責任が問われた事例の経緯責任が問われなかった事例の経緯2002年6月15日、当時4歳であった女児が歯科医院を受診し虫歯治療を受けた局所麻酔剤を原因とするアナフィラキシーショックにより呼吸循環不全に陥り、患者が搬送先の病院で死亡死亡した患者の両親が歯科医師に対して責任を追及し、損害賠償金などの支払を求める経過観察を怠った責任は免れないとして、原告らの請求を一部認める判決が下るはじめに1 前回のインプラント紛争の傾向と対策において、医療紛争は、①技術過誤や②説明義務違反に起因することを明らかにした。今回は、歯科医師にとって避けがたいアナフィラキシーショックを例に挙げ、判例の推移を検討する。 アナフィラキシーショックに関する判例は通常医療において多く見られるが1)、歯科医療においても例外ではない。当初、判例は「アナフィラキシーショックを起こさないための事前の問診義務違反」を議論していたが、薬剤によるアナフィラキシーショックが避け難いことから、やがて「アナフィラキシーショックが発症した後の医師の応急措置の是非」を問うようになった。 アナフィラキシーショックが同じリドカイン系の薬剤に起因するとしても、薬効の如何によっては、処方される相手が幼児か成人かで医師の注意義務に違いが生じるであろう。麻酔に関する(歯科)医師の注意義務の内容は、冷静に再検討される時期にきていると言える。第2回 アナフィラキシーショックを起こして死亡した患者の経過観察を怠った責任が問われた事例/問われなかった事例植木 哲1、2、4/永原國央3、4朝日大学法学部教授1、千葉大学名誉教授2、朝日大学歯学部口腔病態医療学講座インプラント学分野教授3、東海歯科医療紛争研究会41996年8月28日、当時19歳であった女性患者が歯科医院を受診し治療を受けた局所麻酔剤を投与後、患者が意識を失う。歯科医師はすぐに近隣の医院の医師を呼ぶが対応できず、搬送先の病院で死亡死亡した患者の家族が歯科医師に対して責任を追及し、損害賠償金などの支払を求める歯科医師および歯科医院に救護義務違反があった理由は認められないとして請求を棄却裁判例から学ぶインプラント医事紛争の傾向と対策Learn The Basics of Implant 裁判例から学ぶインプラント医事紛争の傾向と対策109─Vol.21,No.6,2014981

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