QDI 2017年4号
6/8

表1 天然歯・インプラント周囲軟組織の比較項目天然歯インプラント周囲上皮①上皮性付着(内側基底板)ありほぼない②細胞間隙広いより広い③滲出液多い多い④細胞の排出歯肉溝底部へインプラント方向へ⑤代謝回転速度早い遅い⑥血流供給源骨膜・結合組織・歯根膜結合組織・骨膜上皮下結合組織⑦線維セメント質と骨膜に直接結合インプラントの長軸と平行に走行し、その周囲を輪状に取り囲む⑧細胞数比較的多い少ない(接合様式によって増減する)⑨コラーゲン線維密性より堅密(線維化傾向)⑩コラーゲン種類Ⅰ+ⅢⅠ+Ⅴの増加(瘢痕組織に類似する)⑪血流少ないより少ない天然歯とインプラントにおける周囲組織の比較 通常、人体は連続した上皮によって覆われている。唯一、歯の周囲は上皮の連続性が途切れている場所と言うことができるが、外胚葉性組織のエナメル質と付着上皮は直接接触し強固な付着を得ているため、広義では不連続の場所は存在しない。 しかし、インプラントは上皮を含む軟組織と骨に実質性欠損を作り、上皮の連続性を破壊し、異物(チタンなど)で蓋をして外界と生体内を交通させている状態である。つまりインプラント周囲組織は非常に不安定な状態であり、異物排除機転の中に存在すると考えられる。インプラント‐周囲組織界面に外来性刺激など別の刺激が加わると、生体は異物排除のスピードを上げると思われる。すなわち、上皮の連続性を獲得するため異物であるインプラント体に沿って、上皮細胞は深部へ増殖を始めると考えられる。❶周囲軟組織の比較(図2) ここで、天然歯とインプラント周囲軟組織の比較をする。インプラント周囲の長軸方向の軟組織の厚みは、生物学的幅径として3~4mmとされており(Cochranら・後述の図10)、天然歯と比較すると1mm程度厚い。そしてその構成はI/A接合様式や、アバットメントの材質などによって変化する4)。インプラントの長期管理のためにはインプラント周囲と天然歯との軟組織の特性の違いを理解する必要がある(表1)。❷上皮の比較 インプラント周囲上皮は口腔粘膜上皮由来であり、天然歯周囲の付着上皮の性質とは異なっている。 天然歯周囲の上皮性付着は非常に強固であることが知られているが、インプラント周囲上皮も天然歯と同様に内側基底板を持ち5)、半接着斑を形成するとされる。しかしその数は少なく、臨床的な封鎖強度は低いと考える。 また、上皮細胞の代謝回転は、天然歯付着上皮では特異的に活発であるが、インプラント周囲は口腔粘膜と同程度であ  及ぼす影響を考察する  及ぼす影響を考察する610605 ─Vol.24, No.4, 2017

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る