QDI 2018年2号
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べく、ボックス型チタンメッシュを応用した新たな手法を紹介した(図1)4)。そして、当時の臨床現場に普及しつつあったCBCTを審美領域の術前診断に応用することの有用性を示し5)、従来型のフラップレス手術の課題であった抜歯窩外側への骨造成(以下、外部骨造成)のアプローチ法を提案した。 今回の報告では、筆者が行った治療の経時的な検証結果から導き出された1つの結論をもとに、抜歯後即時埋入インプラントを計画・実施する際の留意点について述べてみたい。 フラップレス抜歯後即時埋入インプラントは、低侵襲と唇側板の保存が期待された1990年代前半の黎明期に始まり1)、2000年代に入ると積極的なギャップの確保と移植材料の併用により急速な発展を遂げた2)。しかしながら、2000年代半ばには抜歯窩内の唇側ギャップに依存した術式の限界が露呈し始め3)、審美的不調和に苦慮する過渡期を迎えていた。その折、筆者は本誌の2011年1号においてフラップレスおよび即時埋入が持つ優位性と骨造成が持つ予知性を両立させるはじめにいくつかの問題点が浮かび上がる(表1)。これらのことを鑑み、審美領域における抜歯後即時埋入インプラントをCBCT画像による診断を基に分類し、安全・確実な治療計画を立案するうえで重要となる指標を整理した。 抜歯後即時埋入インプラントの治療経過を検証した結果、治療の予後を左右する主たる要因は、硬・軟組織によるバイオタイプの改善(外部骨造成および結合組織移植)と三次元的診断に基づく埋入位置の具現化であった。その一方で、抜歯後即時埋入インプラントが施術されている現状を分析すると抜歯後即時埋入インプラントにおける治療計画の重要性表1 抜歯後即時埋入インプラントの問題点審美領域においては、フラップレスによるアプローチにアドバンテージがあることは論を俟たないが6、7)、治療計画の段階で硬・軟組織の必要量を予測し、最適な埋入位置を決定するための指標(骨幅、顎骨形態、解剖学的構造など)が不足している。フラップレス抜歯後即時埋入インプラントは一見簡単そうに見えて短期的な治療結果も良好であるため、臨床経験の浅い術者が手掛けやすい印象があるが、診断と術中におけるわずかなエラーが、潜在的なリスクとして予後に影響を及ぼす可能性が高い。抜歯窩内に設定した唇側ギャップは、骨移植材料を用いたとしても術後にある一定量のボリュームロスが生じることは避けられないが、フラップレスによるアプローチではオーバコレクション(外部骨造成)が困難である。フラップアクセスによる抜歯後即時埋入は、術野の明示と確実な骨造成を行ううえですぐれた手法であるが、抜歯窩開放部の閉鎖には繊細さが求められ、実際には熟練者にしかなしえないような難度の高い症例報告がされている場合がある。11121314図1-a〜f フラップレス抜歯後即時埋入インプラントにおけるボックス型チタンメッシュの応用。根尖側可動粘膜に加えた縦切開を通じてボックス型のチタンメッシュを挿入・固定することでスペースメイキングを確立・維持する術式である。歯肉縁レベルが維持されていることが前提であるが、開窓および軽度の裂開症例に対応できること、術後に瘢痕状の傷跡が残りにくいことが大きな特徴である4)。低侵襲な抜歯インプラントの埋入可動粘膜の縦切開骨移植材料の填入チタンメッシュの挿入プロビジョナルによる封鎖deabcf37抜歯後即時埋入インプラントの光と影―その分類と成功に導くためのポイント―0201 ─Vol.25, No.2, 2018

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