QDI 2018年2号
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 インプラント治療は現在、口腔機能の回復を行ううえで必要不可欠な存在となっている。多くの基礎/臨床研究を基盤として科学的根拠の高い論文が出版され、歯学領域において注目度の高い分野であると思われる。本稿では、整形外科領域などで着目され始め、従来の概念から変わりつつある「骨質(Bone Quality)」に焦点を当て、インプラント治療を基礎的ならびに臨床的に見直してみたい。そして、「骨質」がインプラント治療に対してどのような影響を与えるのかについて、いくつかの研究と症例を提示し、その意義を考えてもらった。(編集部) インプラント治療の有無にかかわらず、われわれは日常臨床でよく「骨質」という言葉を耳にする。ところが“骨質とは何か”という問いに正確に答えることは難しい。それでは、われわれ歯科医師と同様に骨を扱う基礎医学や臨床医学において、「骨質」はどのように位置づけられているのかを見てみよう。 2000年にアメリカ国立衛生研究所(National Institute of Health[NIH])は骨質の新規概念を提唱し、骨質とは「骨構造(bone architecture)」、「骨代謝回転(bone turn over)」、「石灰化(mineralization)」ならびに「損傷の蓄積(damage accumulation)」などから構成されることを報告した1)(図1)。さらに2005年にNIHが行った会議の中で、「骨質とは骨折への抵抗性を示す骨の総合的な特徴」であることが定義づけられている2、3)。また「骨構造」に関しては、「骨細胞」、「コラーゲン線維の配向性」、ならびに「生体アパタイト結晶の配向性」(配向性≒優先配列方向、生体アパタイト結晶=ハイドロキシアパタイト)などが関与しているとされる4~7)(表1)。つまり「骨質」はさまざまな要素から構成されており、単純にひとつの指標で評価できるような概念ではないことがわかる。はじめに骨質の定義黒嶋伸一郎 (Shinichiro Kuroshima)*1、3宮本郁也 (Ikuya Miyamoto)*2澤瀬 隆 (Takashi Sawase)*3*1 長崎大学病院 口腔・顎・顔面インプラントセンター*2 岩手医科大学歯学部 口腔顎顔面再建学講座口腔外科学分野*3 長崎大学生命医科学域(歯学系) 口腔インプラント学分野True relationship between dental implants and bone qualityいまこそ知りたいインプラントと”骨質“の      本当の関係SPEAKER’S ARTICLE第8回 日本国際歯科大会2018Hホール10/7(SUN)午後54Quintessence DENTAL Implantology─ 0218特集2

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