QDI 2018年2号
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 従来、骨の力学的機能の評価を行う際には、骨量と骨の強さ(骨強度)を測定することが一般的であり、骨強度は骨密度と同義語であった(骨密度:単位体積当たりの生体アパタイト結晶の量)。ところが2000年、NIHはその概念を変更し、「骨強度は骨密度だけでは完全に説明することはできず、骨強度は互いに独立する骨密度と骨質から構成される」ことを報告した1)(図2)。近年、筆者らと共同研究を行う大阪大学の石本と中野らは、「骨質」が骨の力学的機能に重要な役割を果たすことを証明しており8)、さまざまな研究・臨床の領域において「骨質」の評価が注目を浴びている。表1 骨構造の構成要素図1 骨質の構成要素。図2 骨の力学的機能。骨構造(Bone architecture)骨代謝回転(Bone turn over)石灰化(mineralization)損傷の蓄積(damage accumulation)骨質(Bone quality)骨の力学的機能骨 量(Bone quantity)骨強度(Bone strength)骨密度(Bone mineral density)骨 質(Bone quality)骨構造骨細胞(ネットワーク)骨基質を産生する骨芽細胞が基質内に埋まり込んだ状態の細胞。骨に関連する全細胞の90~95%を占める。骨小腔という小部屋に格納された骨細胞は、触手である樹状突起を伸ばして骨内に細胞ネットワークを構築する。コラーゲン線維の配向性ここでは骨基質に限定するが、石灰化が起こる時の足場となる。おもに骨芽細胞が産生し、骨に加わる荷重によりコラーゲン線維の優先配列方向(≒配向性)は、主応力伝達方向へと変化する。生体アパタイト結晶の配向性コラーゲン線維とともに骨芽細胞が産生するハイドロキシアパタイトのことである。生体アパタイト結晶は六角柱の構造をしており、c軸が力学的機能に重要な役割を果たすことが明らかにされている。骨に加わる荷重により、生体アパタイト結晶のc軸配向も主応力伝達方向へと変化する。550219 ─Vol.25, No.2, 2018

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