QDI 2018年4号
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 口腔内スキャナ(以下IOS;Intraoral Scanner)というと、「精度はどうなの?」、「まだまだ高いんでしょう?」などと、どちらかというとネガティブな印象を持たれる読者は多いのではないだろうか。しかし、思い出して欲しい。デスクトップパソコンがまだ分厚いブラウン管のモニタでワープロ程度の機能しかなく、フロッピーでデータを交換していた時代を。その時代から、皆さんが今お使いの薄型ノートパソコンに多彩な機能が搭載され、無線LANでデータとやりとりし、日々の業務から手放せない生活必需品になるまで、いったいどれくらいの期間がかかっただろう? 現在市販されているIOSは、テレビやPCのモニタがブラウン管から薄型液晶へ変わったパラダイムシフトをすでに達成しているといっても過言ではない。つまり、あとは時間の問題で精度や適応が拡大していくのは自明の理である。 そこで今回は、読者の日常臨床において、将来必需品となりうるこのIOSが、いま現在「何ができて」、「何ができないのか」をわかりやすく解説するとともに、インプラント治療に特化して、購入予定者から初心者、そしてすでにお使いの読者まで幅広く役立つ情報を提供することを目的とした。はじめにIOSとは?〉そもそもIOSって何に使えるの? デジタルというとCAD/CAMはなんとなくわかるけど、スキャナとなるとピンとこない、という読者もいるのではないだろうか。しかし、デジタル歯科は非常に単純で “Digitalization”→“CAD”→“CAM”の3つのステップからなる(図1)。 CAD/CAMはご存知のとおりだが、CAD/CAMで何かを製作する際には、必ず生体情報をデータ化する必要がある。読者がジルコニアという材料を使っていたら、すでにデジタル歯科を実践していることに他ならない。つまり、院内では従来法の印象に石膏を注ぎ模型製作し、すべてアナログで完了しているつもりでも、その後歯科技工所で技工用スキャナを用いて模型という生体(口腔内)情報をSTLデータというフォーマットにデジタル化し、CADソフトウェアにインポートし設計を行っているのである。 IOSとは、簡単にいうと、従来のアルギン酸やシリコーンなどの印象材を用いた印象法の代替法であり、口腔内の生体情報を直接的にデジタル化するものである。IOSを用いた印象を光学印象・デジタル印象という(動画1)。原理は、口腔内の情報を静止画像または動画で撮影し、それをソフトウェア上で瞬時につなぎ合わせることにより、立体的に三次170517 ─Vol.25, No.4, 2018

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