QDI 2018年5号
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症例1-a〜c 患者は72歳、男性。インプラント周囲粘膜の腫脹を主訴に来院。上部構造をスクリュー固定にて装着後2年が経過している。近心のBOPのみ+である。骨レベルに差があり、インプラント近心の埋入深度が深くなったことから骨縁下マージンとなっている。この症例では生物学的幅径を侵害しているため、近心のBOP(炎症)は近心の歯槽骨を削除しない限り消えることはないし、プロービングデプスも同様の理由で浅くならない。abcインテナンスを行っても骨縁下に対してプローブをする形になり、「近心だけBOP(+)です」あるいは「ポケットが深いです」などという報告がきます。 こういったケースだと健康なのか粘膜炎なのかということたいと思います(症例1)。6部の欠損で、5遠心の骨が高い状態です。67が下がってくるような場合は、どうしても遠心に骨レベルを合わせて近心が深くなります。 このように骨縁下マージンとした場合は、歯科衛生士がメインプラント周囲炎は世界中で問題となり、多くの論文で取り上げられています。しかし、インプラント固有の疾患とする考えや、歯周病の延長線上とする考えなどさまざまな捉え方があり、確たる定義はありません。そのため、臨床家は診査・診断の時点から悩むことになります。 そこで今回はインプラント周囲炎に対して異なる考え方をもつインプラントロジストの宗像源博先生とペリオドンティストの大月基弘先生に、現在のインプラント周囲炎を定義づけている3つの項目(BOP:Bleeding On Probing、プロービングデプス、骨吸収)を中心に検討し、さらにはインプラント周囲炎の将来展望にまで踏み込んで語っていただきました。 また、今回の対談収録後に行われたユーロペリオにて、インプラント周囲炎の定義が発表されました。その内容をふまえ、大月先生にコラムとして加筆していただきました。(編集部)Motohiro Munakata昭和大学歯学部インプラント歯科学講座准教授Implantologist 宗像源博症例1術者(外科)因子が引き起こす治らない周囲炎(宗像症例)410721 ─Vol.25, No.5, 2018

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