QDI 2018年5号
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 われわれ歯科医師は、口腔インプラント治療に限らず、治療を始める前にその治療の効果や副作用、言い換えるとメリットとデメリットを十分に吟味した信頼性の高いデータを用いて、具体的にわかりやすく患者に説明する責任がある。これらのデータに基づいて、治療を受ける患者が十分納得したうえで、患者と歯科医師が共同で治療方針を決定する必要がある(Shared Decision Making)。特に目の前の患者が日本人である場合には、日本人を対象とした臨床疫学データをその説明に用いるべきである。なぜなら、日本人の顎口腔系の骨格が西洋人のそれと比較すると華奢であることが知られているからである。すでに、われわれは日本人を対象にした口腔インプラント治療に関するレビュー1)を行ったことがあるが、それから10年以上が経過した。このレビューが対象とした時代からの口腔インプラント治療の発展を鑑みると、現在の実臨床で活用するには、より最新の文献を含めたレビューが必要である。 そこで今回、1996~2005年の文献を対象に行った以前のレビュー1)と同様の手法を用い、2006~2015年の日本人を対象とした口腔インプラント治療の臨床成績に関する文献を系統的にレビューし、過去20年間の蓄積された臨床データの統合を試みた。 本報告は、口腔インプラント治療に関する基礎情報を日本の臨床歯科医師に提供するためのシステマティックレビューであり、ここで提示された結果が少しでも歯科医師、ひいては患者のために役立つことを願っている。三野卓哉(Takuya Mino)*1小田師巳(Norimi Oda)*1、2園山 亘(Wataru Sonoyama)*1、3窪木拓男(Takuo Kuboki)*1*1 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科インプラント再生補綴学分野*2 大阪府開業:おだデンタルクリニック*3 滋賀県開業:浅田歯科医院はじめに 日本人の顎口腔系の骨格は西洋人のそれと異なることが知られており、日本人を対象とした臨床疫学データの必要性が叫ばれて久しい。そこで本稿では、日本人を対象としたインプラント治療の臨床成績に関する文献を系統的にレビューし、過去20年間の蓄積された臨床データの統合を試みた岡山大学の論文に着目した。四角四面な結論ではなく、臨床現場で使える情報を提供するためのシステマティックレビューとして役立てていただきたい。(編集部)67日本人を対象とした過去20年間の口腔インプラント治療の臨床成績に関するシステマティックレビュー0747 ─Vol.25, No.5, 2018

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