QDI 2018年6号
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 インプラント治療の2回法ではオッセオインテグレーションを獲得後、口腔粘膜を開窓して口腔との貫通部を形成し、インプラント‐アバットメント‐上部構造体を連結することで目的を達成する。これは上部構造体をはじめ各コンポーネントそれぞれに接合界面が存在することを示しており、その接合精度の良否が術後経過を左右することにもなる。 一方でインプラントは、生体組織との間にも界面を形成する。骨とインプラントの界面はオッセオインテグレーションにより結合し、その確実な獲得が良好な予後につながることは周知である。 また、インプラントおよびアバットメント、そして上部構造体と軟組織の界面は、口腔との貫通部に相当するため、口腔からのバイオフィルムや不潔な残存歯からの感染の侵襲を受け、インプラント周囲粘膜炎から進行するインプラント周囲炎の初発部位となる(図1、2)。それだけに術後管理におけるメインテナンスセラピーの効果的な継続のために、術前からの歯肉-歯槽粘膜境(muco-gingival junction:MGJ)の位置、角化歯肉の傾向、厚さなどのバイオタイプの診断は軽視できない。さらに、術後の歯肉形態の維持という点でも術前の軟組織の様態は長期予後とかかわりをもつ重要な要因でもある。 この軟組織について、2006年に筆者らはインプラント頬側縁上粘膜の高さと幅の長さに注目し、臨床例で計測した。その結果、高さと幅の間には、その比率に密接な関係があることを認め、その比率関係をインプラント頬側縁上粘膜の“生物学的比率”と名付け報告した1、2)。2006年にNozawa、Enomotoらは、インプラント周囲粘膜の高さと幅には密接な関係“生物学的比率”があることを報告した。そして、症例供覧を通じて、軟組織の厚さを確保することが、インプラント周囲組織の維持につながると述べた。今でも多くの講演で引用される有名な論文だが、あれから10年以上が経ち、当時報告した症例はどのようになったのか?著者自身に長期予後を振り返ってもらい、“生物学的比率”の臨床への影響について語ってもらった。(編集部)はじめに33

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