QDI 2018年6号
6/8

研究の背景 オッセオインテグレーションの概念を基盤とする歯科インプラント治療は、無歯顎および部分無歯顎の補綴治療に広く受け入れられている。オッセオインテグレーテッドインプラントの創生期、ブローネマルクシステムにおける機械加工の滑沢な表面と、ITIシステムに代表される微小ポーラス構造を持ったチタンプラズマスプレーの粗い表面の2つの異なるインプラント表面が用いられた。報告されている長期の臨床研究において、ブローネマルクシステムでは80~99%の、ITIシステムでは88~96%の生存率が示されている。この高い生存率にもかかわらず、インプラント治療においては生物学的、機械的併発症が存在する。現在、歯科インプラント治療の予後の関心は、単に生存ということではなく、①インプラントの成功、②インプラント周囲炎の発症、③上部構造の長期的安定に移っている。超高齢社会が到来し平均寿命が延伸する中、インプラント治療において長期臨床経過を知ることは、インプラントの喪失や併発症を導く因子を理解し、欠損補綴治療方法を選択するうえで非常に有益である。 本後ろ向き研究の目的は、チタンプラズマスプレー(TPS)表面を持つソリッドスクリューインプラントの長期的な臨床結果を評価するとともに、生存率に影響する生物学的、機械的併発症を同定することである。方法【 研究デザイン 】 本後ろ向き観察研究は長崎大学の臨床研究倫理審査委員会の承認を受けて行った(No.1512)。解析対象は1984~1990年の間に、7施設の個人開業歯科医院でTPS表面ソリッドスクリューインプラントを埋め込み、補綴装置を装着したすべての患者である。埋入されたすべてのインプラントは、Straumann社のTPSタイプ(図1;TPSタイプ、Institute Straumann)と、Bonet 45°ショルダータイプ(図2;Sタイプ、Institute Straumann)の2種類で、92名の患者に埋入された223本のインプラントが該当した。【 医療記録の調査 】 診療録から、患者の年齢、性別、喫煙習慣、インプラント埋入日、インプラントの情報(長さ、直径、種類)、埋入部位、角化粘膜の幅、インプラント埋入前後における付加的な外科的処置(骨造成や軟組織処置など)の有無、補綴装置装着日の情報が抽出された。本研究では補綴装置の種類を、インプラント支持型補綴装置、天然歯‐インプラント連結補綴装置、インプラント支持オーバーデンチャーに大別した。本研究の最終評価日は2015年12月31日とし、インプラントの喪失、生物学的併発症(排膿をともなうインプラント周囲炎)、機械的文献要約図1 Straumann社のTPSタイプインプラント。(別冊the Quintessence インプラント YEAR BOOK 2003より引用)図2 同じくStraumann社のSタイプインプラント。(小誌1994年5号より引用)12Horikawa T, Odatsu T, Itoh T, Soejima Y, Morinaga H, Abe N, Tsuchiya N, Iijima T, Sawase T. Retrospective cohort study of rough-surface titanium implants with at least 25 years’ function. Int J Implant Dent 2017;3(1):42.5525年以上の長期インプラント症例疫学調査 ―要約と座談会から良好な長期予後が得られたポイントを学ぶ―0899 ─Vol.25, No.6, 2018

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る