QDI 2019年1号
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はじめに 手術を行う心得として、「まったく同じ症例は、存在しない」ということを認識することが重要である。つまり、成功例に基づく術式や骨補填材を鵜呑みにすることは危険で、同じ結果が得られるとは限らない。特に、サイナスフロアエレベーションでは異物を生体に填入あるいは埋入するため、異物に対する生体の反応を熟知しなければならない1、2)。本特集では、サイナスフロアエレベーションの術後CT画像で判明した真実の一部を紹介する。どこにウィンドウを作製するか? サイナスリフトでは、上顎洞前壁にウィンドウを作製し、同部の周囲から上顎洞粘膜骨膜を剥離する。上顎洞の形態には個人差があり、上顎洞粘膜骨膜は非常に薄いため、盲目的に剥離を行うと裂開が生じやすい。したがって、上顎洞粘膜骨膜を剥離しやすい位置にウィンドウを作製する必要があり、「ウィンドウを作製する場所」はサイナスリフトを成功させる大きなポイントと考えられる。症例1(図1-a~h) 患者は38歳の女性。76欠損のインプラント治療のため、サイナスリフトを予定した。パノラマX線写真のみの診断では、ウィンドウを76部に設置しがちである(図1-a)。しかし、近遠心断CT画像では、上顎洞の前方は4部にまで及び、上顎洞粘膜骨膜を十分に挙上するためには、4部の粘膜骨膜も剥離する必要がある。したがって、76部にウィンドウを作製した場合、54部はアンダーカットとなり、盲目的に上顎洞粘膜骨膜を剥離することになると思われた(図1-b)。図1-a 術前のパノラマX線写真。サイナスリフトを行う場合、76部(黄線部)にウィンドウを作製しがちである。図1-b 術前の近遠心断CT画像。黄線部にウィンドウを作製した場合、54部はアンダーカットになると思われた。ab図1-c 上方から上顎洞を観察したボリュームレンダリング画像。76部の上顎洞底は陥凹し、前後には隔壁が存在していた。図1-d 外上方からのボリュームレンダリング画像。黄線部(76部)にウィンドウを作製した場合、上顎洞の前方と後方がアンダーカットになり、盲目的な剥離になると考えられた。図1-e 前上方からのボリュームレンダリング画像。緑線部(654部)にウィンドウを作製した場合、上顎洞底と内壁へのアプローチはほぼ直線的になり上顎洞粘膜骨膜の剥離・挙上が容易になると考えられた。症例1患者:38歳、女性(図1-a~h)23CTが語る サイナスフロアエレベーションの真実0023 ─Vol.26, No.1, 2019

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