QDI 2019年3号
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 インプラント治療が確立された現在でも、抜歯からインプラント埋入に至るまで、どのような手順で治療を進めてゆくかは悩ましい課題である。 審美性や治療期間、患者のベネフィットなどを考えたとき、抜歯後ただちに行う即時埋入インプラントはメリットが大きい1、2)。しかしながら、即時埋入への過度の傾倒はしばしば早期の治療介入を引き起こす3)。その一方でホープレスと判断された時点で硬・軟組織のダメージが大きい場合、どのようなプロセスや手法で硬・軟組織の回復を図りインプラント埋入へ至るかには、さまざまな選択肢があり、問題を複雑にする。 また、抜歯時のリッジプリザベーションについてはいまだ見解が定まらず、多くの臨床医が汎用する一方で、否定的な考えをもつ臨床医も少なくない。さらにその効果に対して、否定的あるいはメリットを認めないとするレビュー論文もある4、5)。抜歯時点での抜歯部位の状況は千差万別であり、残根状態の抜歯と重度に骨吸収をきたした歯周病罹患歯の抜歯とでは事情が異なるのは当然のことである。十分な骨幅があり、また健全な骨壁を有する残根状態の歯では、抜歯にともなう若干の骨のボリュームの減少は避けることができないものの6)、良好な骨の再生は期待できる。歯を失うことにより歯槽突起は減少し、抜歯原因、歯の位置、残存骨壁などの影響を受け7)、欠損部顎堤形態は定まってゆくものと考えられる。逆に歯根膜を喪失し骨壁を失った状況下での抜歯では、以降のインプラント治療を円滑に行うためにさまざまな配慮が必要となる。 そこで本稿では、抜歯時点で進行した骨吸収をともなう症例に対してインプラントを適応する症例を中心に、抜歯からインプラントへの移行の治療戦略について再検討してみたい。はじめに230343 ─Vol.26, No.3, 2019

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