QDI 2019年4号
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 近年、歯科インプラント治療は広く世界に普及し、多くの人々がその恩恵に浴しているが、その一方でさまざまな合併症が報告されている。その中で稀ではあるが、重篤な合併症として機能下にあるインプラントの破折が挙げられる。インプラントが破折すると上部構造が使えなくなり、その回復のためにはインプラントの除去と上部構造の再作製が必要となる1~8)。インプラントの破折は大きな咬合力が掛かる臼 まず、筆者が経験したインプラント破折例を提示したい。症例1 患者は60代の男性、数年前に他院にて治療した67部のインプラント上部構造が脱離し来院した。パノラマX線写真では67部のインプラント2本が水平的に破折し、インプラント辺歯部の単独歯補綴のインプラントで多く起こり、特に細いインプラントが破折しやすいと言われている。しかし、実際の臨床で遭遇するインプラント破折例は種々の病態を呈し、その原因には多様な因子が絡んでいるように見える。 本稿ではインプラントはなぜ破折するのか、インプラント破折にかかわる要因と破折への道筋を解き明かしてみたい。縁にカップ状の骨吸収とインプラント周囲骨のX線不透過性の亢進を認めた(図1)。CTではインプラントが舌側寄りに埋入されており、上部構造の歯冠部が頬側に張り出し、頬側カンチレバーになっていたと推測された。本例では破折したインプラントの頬側に骨幅が十分存在したため、破折インプラントを残し新しいインプラントを埋入した。図1 症例1のインプラント破折後のパノラマX線写真。67部のインプラントが下3分の2を残し水平に破折している。はじめに臨床例に見るインプラントの破折270515 ─Vol.26, No.4, 2019

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