QDI 2019年5号
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の提案とを活用した 上顎洞底挙上術の術式の1つであるラテラルアプローチは、上顎洞粘膜の剥離・挙上を「直視・直達」で行うことができる予知性の高い治療法である。しかしながら、(1)比較的大きなフラップ形成が必要(2)上顎洞前壁・側壁に骨窓の形成が必要(3)骨移植にともなう骨採取や感染源となりうる骨補填材の併用が必要となるなど患者への侵襲が大きい。加えて、術中の後上歯槽動脈からの出血や、術後の腫脹、皮下出血斑、急性上顎洞炎といった合併症の発症も懸念される(図1)。また、近年では全身疾患を有する高齢患者の割合が増加したため、ラテラルアプローチの適用には慎重を要する。 一方で、2〜4mmの挙上が可能とされているクレスタルアプローチ1)は、フラップの形成範囲を最小限にすることができ、術式の単純化、手術時間の短縮が可能になるなど比較的侵襲性が低い手法である。また、その結果として術後の発 MIとは、2002年の国際歯科連盟の「Minimal Intervention in the Management of Dental Caries」と称されるPolicy Statementに由来し、う蝕管理における最小の介入を示す。 上顎洞底挙上術にそのMIの概念を取り入れるとすると、症例選択と同時に処置内容の侵襲性を考慮すべきだろう。つまり、既存骨高径を基準としてラテラルかクレスタルアプローチのどちらを行うかを決定するが、ショートインプラントを適用することで従来の既存骨高径の基準に対する解釈を変更することも可能となる。本稿では、上顎臼歯部における低侵襲な治療を患者に提供するための試みについて紹介する。はじめに上顎臼歯部インプラント治療におけるMIコンセプト530705 ─Vol.26, No.5, 2019

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