QDI 2019年6号
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サイナスリフトをやってよい症例、 はじめに 上顎洞底挙上術には、前壁骨を開窓する「サイナスリフト」と歯槽頂からインプラント窩形成にともなって洞底粘膜を挙上する「ソケットリフト」がある。本稿では、継発症の多いサイナスリフトについて述べる。 サイナスリフトの二大合併症として、上顎洞粘膜の穿孔・断裂と術中出血がある1)。これらの合併症は避けなければならない。 サイナスリフトは洞底部の上顎洞粘膜を上顎洞底・前壁・鼻腔側壁の骨表面からドーム状に剥離挙上し、その下に作ったスペースに移植材を移植するのが基本術式である。この洞粘膜を剥離挙上する操作のみによっても上顎洞粘膜の浮腫という炎症反応が生じる。その際、もし洞粘膜の穿孔・断裂が生じると移植材の固有上顎洞内への漏洩をまねき、感染が生じると急性あるいは慢性の上顎洞炎から全洞炎を引き起こす。移植材を除去しないかぎり感染は慢性化し治癒しにくい。もっとも避けなければならない合併症である。 洞粘膜を穿孔・断裂しやすい条件には、上顎洞粘膜の厚さ、骨隔壁の有無、上顎洞の大きさと骨壁の厚さ、開窓部の骨の•喫煙者•糖尿病未治療や コントロール不良の患者•自立度の低い高齢者•侵襲性歯周炎•上顎洞内腫瘍性病変•術後性上顎嚢胞•歯性、鼻性副鼻腔炎•アスペルギルス症•好酸球性副鼻腔炎サイナスリフトの難度を上げる要因洞粘膜損傷・穿孔・断裂を起こす可能性がある•上顎洞粘膜の肥厚が5mm以上•上顎洞が大きく洞粘膜が菲薄(CTで確認できない)•上顎洞前壁の骨が厚い(3mm以上)•上顎洞底に隔壁が存在大量出血の可能性がある•CTで開窓部骨内に上歯槽動脈の走行が確認できる18Quintessence DENTAL Implantology─ 0846特集1

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