QDI 2019年6号
2/8

明海大学歯学部口腔顎顔面外科学分野Ⅰ教授Jun Shimada嶋田 淳 いけない症例形状、隣在歯根の存在、上顎洞根治術の既往2)、洞底骨の高さ3)などがあり、それらの条件をもとに術前診断を行い、サイナスリフトの難度を判断することができる。その項目を上に示す。自身のスキルと照らし合わせたうえで難度が高いと判断した症例は、「やってはいけない症例」として大学病院や専門医に相談していただきたい。 さらに、上顎洞粘膜に穴が開いた、あるいは破れた場合の対応法について準備しておくことも合併症の予防につながる。特に上顎洞粘膜の肥厚のある症例のサイナスリフトの適応・非適応について言及した記述はほとんど見られない。本稿では上顎洞粘膜の腫脹や浮腫の状態とその他の上顎洞の病的所見とを関連付けたサイナスリフトの適応・非適応についても言及してみたい。 また、術中出血は開洞時の血管損傷によって生じる。サイナスリフト術中の出血による重篤な合併症の報告は稀だが、径が太い血管の損傷によって上顎洞内から鼻腔、後鼻孔に大量に出血が回れば気道閉塞の可能性がないわけではない。術前の画像診断によって血管の走行位置と太さを把握して、術式を選択する。•上顎洞根治術既往がある•副鼻腔炎の既往歴がある•急性or慢性の副鼻腔炎による液面形成または洞全体の不透過像•上顎洞粘膜の肥厚が5mm以上•自然孔の狭窄をきたしやすい解剖学的構造 •自然孔‐篩骨漏斗‐半月裂孔が閉鎖している   •長く細い篩骨漏斗 •複雑で小さな胞がたくさん集まる篩骨胞     • Haller胞(眼窩下壁の骨内部に存在する含気胞)の存在 •含気甲介胞(中鼻甲介内に形成された含気胞)   •篩骨洞に粘膜肥厚像/鼻茸をともなう術後副鼻腔炎を起こす可能性がある190847 ─Vol.26, No.6, 2019

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る