QDI 2019年6号
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はじめに─超高齢“ポリファーマシー”時代の到来 厚生労働省保健局によると、75歳以上の後期高齢者では、その86%が何らかの慢性疾患(高血圧症、胃・十二指腸潰瘍、脂質異常症、関節症・脊椎障害、骨粗鬆症、糖尿病、白内障・緑内障、認知症)を抱えており、さらに後期高齢者の64%は2種類上の慢性疾患を抱えているのが現状である(図1)1)。そして、60歳を超えると1人が7剤以上の薬を処方される割合が増加し、65歳以上では約4剤2)、75歳以上の後期高齢者では、4人に1人が7剤以上の薬を使用する多剤併用状態となっている(図2)3)。 したがって、人口動態の急激な変化や、前期・後期高齢者に認められる身体的/精神的特徴などから、インプラント治療を希望する患者および/または治療が終了してメインテナンスしている患者が高齢化し、慢性疾患に罹患して多剤を併用している場合も少なくないことが推測される。 そこで本特集では、服用薬の観点からインプラント治療について述べる。なお、何剤以上を多剤とするかについての厳密な定義はないが、5〜6種類以上を服用する患者では薬有害事象のリスクが高くなることから、5〜6種類程度の薬使用を「ポリファーマシー」と考えるのが妥当である4)と思われるため、本特集でも5剤以上の薬服用状態を「ポリファーマシー」と呼ぶことにする。図1-a、b 高齢者における慢性疾患の罹患状況。後期高齢者(75歳以上)の86%は慢性疾患に罹患し(a)、64%は2つ以上の慢性疾患に罹患している(b)(参考文献1より引用・改変)。100%80%60%40%20%0%全体高血圧症胃・十二指腸潰瘍脂質異常症関節症・脊椎障害骨粗鬆症糖尿病白内障・緑内障認知症■全体 ■男性 ■女性100%80%60%40%20%0%■ なし 13.7%■ 1種類 22.2%■ 2種類 26.0%■ 3種類 21.1%■ 4種類以上 17.1%75〜79歳80〜84歳85〜89歳90〜44歳95歳以上疾患の個数  内訳(2種類以上再掲) 64.1%a 後期高齢者における疾患別治療患者の割合(有病率)b 後期高齢者における慢性疾患8種類の1人あたりの 保有個数の内訳図2 年齢階級別にみた薬剤種類数別件数の構成割合・1件当たり薬剤種類数。65歳以上の平均は約4剤で、75歳以上の平均は4.5剤以上(参考文献2より引用・改変)。0~14歳(3.04)15~39歳(2.95)40~64歳(3.24)65~74歳(3.60)75歳以上(4.48)(    )1件当たり薬剤種類数■ 7種類以上■ 5~6種類■ 3~4種類■ 1~2種類院内処方(入院外・投薬)院外処方(薬局調剤)100%80%60%40%20%00~14歳(3.70)15~39歳(3.27)40~64歳(3.40)65~74歳(3.76)75歳以上(4.76)100%80%60%40%20%049.629.913.86.751.648.530.429.612.69.243.829.014.412.834.925.816.622.837.231.919.111.844.532.714.97.945.830.213.610.442.228.614.714.533.124.616.326.011.96.1530881 ─Vol.26, No.6, 2019

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