QDI 2020年1号
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 Basicはじめに 今回から全6回にわたり、おもにインプラント治療をこれから始めようと思っていらっしゃる先生方を対象とした連載を始めることとなった。筆者は米国歯周病専門医であるため、記事の内容はおもに歯周/インプラント周囲組織のマネジメントや手術手技に焦点を置いたものになることをご容赦いただきたい。 本連載では、はじめにインプラント治療の成功の判断基準について述べ、次回以降から、治療計画の立て方、手術手技の基本、抜歯後のマネージメント、骨が足りない時の骨増生法(GBR)、そして最後にインプラントのメインテナンスおよびインプラント周囲炎に対するアプローチについて述べたい。6回をとおしてお読みいただくことで、インプラント治療の全体像を把握でき「インプラント治療を始めてみようか」と多くの読者の方に思っていただけたら幸いである。 さて、インプラントの埋入手技自体は、極端に言ってしまえば壁にドリルで穴を開けてネジを打ち込むのと同じ原理である。と書くと、読者の先生方は「そうは言ってもインプラント治療は難しい」と思われるだろう。インプラント治療の難しさは、そこに患者の要望、解剖学的な制限、生体の治癒、補綴装置との関係などが複雑に絡んでくる点に起因する。 そして、無事インプラントを埋入できたとしても何をもってインプラント治療が成功したと判断すればよいのだろうか? 手術が終わり補綴装置も装着された後、3ヵ月、6ヵ月、1年、5年、10年とフォローアップをする際にその基準がなければ判断は不可能である。 そこで第1回目は、インプラントの成功を判断するためにどのような基準が現在おもに使われているのかを中心に解説する。まず、その基準を理解するために欠かせない歯周組織とインプラント周囲組織との違いから始めよう。Basic歯周組織とインプラント周囲組織との違い(1)歯根膜 図1に歯周組織とインプラント周囲組織の比較を示す。ともに歯肉溝、上皮性付着、結合組織付着、そして骨のサポートが存在する。見た目は似ているが、両者のもっとも大きな違いはインプラント周囲に歯根膜が存在しないということで、そのためインプラントは直に骨に接して支えられている。 歯周組織では歯根膜線維が歯根周囲のセメント質に入り込むことによってシャーピー線維を形成し、それが歯を歯槽骨内に留める役割を担っている。その一方で、インプラント周囲にはセメント質/歯根膜がなく、結合組織線維がインプラント表面に対して垂直に入り込んでそれを支えているということがない。米国歯周病専門医が教える インプラント基礎講座1限目田中 毅 Tsuyoshi Tanaka米国ボード認定歯周病専門医フロリダ大学歯周病学講座 アシスタントプロフェッサー歯学部歯周病学プログラム ディレクター102Quintessence DENTAL Implantology─ 0102

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