QDI 2020年3月号
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Advanceはじめに 連載第1回では、骨組織温存のための抜歯法と抜歯即時埋入、リッジプリザベーションの有効性について述べた。これらのことを十分に理解したうえで、どうしても骨組織が不足している場合に骨増生を考えるべきである。 骨増生において、近年一般的に行われているGBR(Guid-ed Bone Regeneration)とは「骨再生を誘導する」ということである。GBRの発想のきっかけは、GTR(組織再生誘導法)と呼ばれる歯周組織再生を目的とした研究であり、1980年代半ばからNymanらの報告1)をきっかけに多くの研究2〜4)が行われてきた。これらの研究では、バリアメンブレンとして生体不活性メンブレンであるe-PTFE膜が使用され、1980年代後半より、このe-PTFE膜をインプラント埋入予定部位周囲の骨欠損の再生に用いる研究が行われた5)。1990年にBuserらは、インプラント埋入予定部位の歯槽骨幅の不足した部位にe-PTFE膜を用い、6〜9ヵ月の治癒期間後にインプラントの埋入を行った臨床報告をした6)。 しかし、これらの方法では初期段階から複数の偶発症も報告された7、8)。その中でも多く見られた偶発症はメンブレンの露出であり、それによってメンブレン下で局所的な炎症が起こり、さらなる骨量の不足をまねくこともあった。その他、メンブレンの陥没により骨再生量が不十分であったり、メンブレンの除去のための二次手術が必要なこともGBRの妨げになった。 これら問題を解決するために多くの臨床研究がなされ、また材料の進歩によっても、GBRは十分に科学的根拠があり、安全で確実な術式として、この20年間で大きく発展してきた。AdvanceGBRの基本 筆者はGBRの基本ポイントを「スペースメイキング」、「バリア」、「スキャフォールド」の3点に絞れると考えており、以下に言及したい9〜11)。 まず、「スペースメイキング」とは、骨再生が完了するまでそのスペースを確保することで、再生部位が陥没しないように、チタン強化した非吸収性バリアメンブレンやチタンメッシュを使用する。また、吸収性メンブレンを使用する場合は、骨補填材自体に骨ブロックや吸収の遅い骨補填材を使用してスペースを確保する必要がある12、13)。 次に「バリア」とは、上皮組織および結合組織由来の細胞を、骨再生をさせたい部位に侵入させないことであり、非吸収性バリアメンブレンあるいは吸収性バリアメンブレンが用いられる。GBRが臨床応用されるようになって30年ほど経過するが、この間に数多くのメンブレンが開発研究されてきた14、15)。 そして「スキャフォールド」とは、確実に骨再生が起こるように必要な足場を提供することである。抜歯窩などで骨壁に覆われた内側性の欠損であれば、血餅を保持するだけで十分白鳥清人 Kiyoto Shiratori静岡県開業:医療法人社団 白鳥歯科日本口腔インプラント学会認定専門医インプラント治療のための 骨増生テクニック第2回骨増生の基本と補綴主導型の治療計画に基づく骨増生プラン112Quintessence DENTAL Implantology─ 0284

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