QDI 2020年3号
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特集2はじめに─筆者がIODを選ぶ理由 昨今は予防の概念が浸透してきていることにより、患者の口腔内に多数の天然歯が残存する時代となった。患者の口腔内の健康を考えれば、すべての天然歯が欠損に至ることなく保存され、生涯にわたり快適に使えることが理想である。しかし、う蝕や歯周病、歯根破折、外傷などにより歯を失ってしまえば、欠損補綴治療の必要性に迫られる。治療すなわち、インプラント、ブリッジ、義歯のいずれかの治療オプションを選択することになる。 インプラントは、単独欠損であれば両隣在歯の切削の回避、補綴設計の単純化、天然歯ではできない力のコントロールなど治療計画をシンプルにすることができる。しかし、多数歯欠損に対して固定性補綴装置にて機能回復を試みると、多数本のインプラント埋入を計画しなければならない。外科的侵襲の大きさ、患者の全身状態、術者の習熟度、高額な治療費用などから治療へのハードルが高くなるケースも多い。また、インプラントが必要となる患者は、高齢者が多く、急なブラッシング能力の低下や思いもよらないタイミングで要介護状態となることも想定される。つまり、インプラント治療後の患者の全身状態に大きな変化が起こることを予測し、治療計画立案の段階で将来的なリスクを最小限に抑えることが大切である。 そこで筆者は、多数歯欠損が存在する患者に対して、経年的な歯の欠損の拡大や、埋入したインプラントに起こりうるトラブルに対応しやすいインプラントオーバーデンチャー(IOD)を用いることが有効だと考えている。患者の将来を見据えたIODの設計を行い、低侵襲で効果的に機能回復を図ることで、患者のQOL向上を目指している。また、IODを用いることにより顎堤吸収を抑える効果があることから、機能の回復のみならず残存組織の保全も期待できると考えている1)。治療戦略インプラントオーバーデンチャーつ3の―高齢患者のQOL向上を目指す臨床の実際―相宮 秀俊 Hidetoshi Aimiya愛知県開業:吹上みなみ歯科4Cホール午後10/17(土)講演者論文550395 ─Vol.27, No.3, 2020

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