QDI 2020年4号
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―デジタル時代の補綴・咬合治療におけるScience and Art―インプラント臨床における顎機能可視化の有用性を考える特集2はじめに 「歯科」の特徴としてScience and Art(科学と匠)が挙げられるが、現代の歯科医療の進歩を牽引するデジタル技術を基盤とした歯科医療、いわゆるデジタルデンティストリーは、医療技術の向上だけでなくそれらのあり方そのものを根本的に変革しつつある。  デジタルで組み上げられた精巧な画像やモニターの中で表現される動きは、数値化された情報をもとに成立するため、いわゆる「Art(匠)」の技術と呼ばれる感覚的な部分がデジタルと相性が悪い。一例を挙げると、咬合に関連する臨床術式のなかには術者の経験や技術に頼っている主観的な部分も多く、デジタルのワークフローに反映させることは非常に困難である。 つまり、アナログとデジタルの移行期である今の時代にこそ、補綴装置の客観的な設計・作製方法を確立する必要がある。そのためには顎口腔領域の形態情報および機能情報をデジタルで収集し、それらを統合・解析することで咬合と顎運動について可視化および標準化つまり「Science(科学)」への移行を目指す必要があると考えられる。 このような背景を踏まえ、本稿では、デジタル時代と言われる現代においてインプラント臨床を中心に今後進むべき方向性を考えてみたい(図1)。杉元 敬弘松本 勝利京都府開業:スギモト歯科医院福島県開業:あらかい歯科医院Norihiro Sugimoto重本 修伺鶴見大学歯学部 クラウンブリッジ補綴学講座Shuji Shigemoto牧草 一人京都府開業:牧草歯科医院Kazuto MakigusaKatsutoshi Matsumoto小川 匠鶴見大学歯学部 クラウンブリッジ補綴学講座Takumi Ogawa図1 歯科臨床におけるScience and Art(科学と匠)の関係。術者の技量や経験といった匠をデジタル技術で科学することは今後の歯科のバランスのとれた発展につながるのではないだろうか。科学Science現在のデジタル技術current digital technology匠Art客観的評価臨床経験の積み重ね術者の「感覚」人に伝える(教育)ことが非常に困難定量化高い再現性「科学と匠」430547 ─Vol.27, No.4, 2020

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