QDI 2020年4号
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 Basicはじめに 天然歯の保存が可能であれば保存するべきであるが、時にはホープレスの歯を抜歯しなければいけない決断に迫られることもある。抜歯後の次の治療オプションとして、現在ではインプラント治療が第一選択になることが多い。 Schroppらの研究によると、抜歯後6ヵ月で骨の水平的な顎堤の幅は半分失われ、そのうちの2/3の変化は最初の3ヵ月に起きたとある1)。Tanらのシステマティックレビューでは、抜歯後6ヵ月の時点で水平的な骨吸収が垂直的なものよりも顕著であったと報告されている(水平的吸収:29〜63%、垂直的吸収:11〜22%)2)。将来のインプラント埋入を考えた時に、この抜歯後の骨吸収(図1)を抑えることができれば、その後の治療が円滑に進むことは想像に難くない。 抜歯後の顎堤の吸収を抑えるために行われる処置のことをリッジプリザベーションと呼ぶ。このなかにはおもに矯正による歯の挺出、歯根を頬側にだけ残す「ソケットシールドテクニック」、そして骨補填材を抜歯窩に充填する「ソケットグラフトテクニック」がある。過去の研究を基にしたデータでは、抜歯のみで自然治癒した場合は45%もの水平的骨吸収が認められた一方で、ソケットグラフトテクニックを行ったグループでは18%しか水平的骨吸収が起こらなかったとある3)。ソケットグラフトテクニックで完全に骨の吸収がなくなるわけではないが、将来のGBR(Guided Bone Regeneration、骨再生誘導法)の必要性を減らせることは間違いない。 連載4回目となる今回は、まずソケットグラフトテクニックを理解するために必須な抜歯後の治癒過程とソケットグラフトテクニックの一般的術式について解説した後、初心者が臨床で抱くだろう疑問に論文のデータを基に答えていきたい。Basic抜歯後の治癒過程(図2)血餅期(抜歯後約0〜24時間) 抜歯直後から抜歯窩は血液で満たされる。血液凝固反応が米国歯周病専門医が教える インプラント基礎講座4限目田中 毅 Tsuyoshi Tanaka米国ボード認定歯周病専門医フロリダ大学歯周病学講座 アシスタントプロフェッサー歯学部歯周病学プログラム ディレクター図1 (上)抜歯のみでは、おもに水平的な骨吸収が起こる。(下)ソケットグラフトテクニックを行った場合は顎堤の吸収を抑えられるが、それでもある程度の吸収は起きてしまう。抜歯のみ抜歯+ソケットグラフト94Quintessence DENTAL Implantology─ 0598

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