Quintessence DENTAL Implantology2020年No.6
8/9

白鳥清人 Kiyoto Shiratori静岡県開業:医療法人社団 白鳥歯科日本口腔インプラント学会認定専門医インプラント治療のための 骨増生テクニック第6回下顎前歯部の骨増生Advanceはじめに:下顎前歯部の解剖学的特徴 下顎前歯部の歯槽部は非常に薄く、歯根の唇側壁、舌側壁の厚径は歯槽縁の下方5mmの部位で両壁とも平均0.6mm前後である1)。そのため、抜歯後には早期に抜歯窩の外側壁が吸収してしまい、水平的骨幅が不足していることが多い。また、感染疾患や外傷によって容易に垂直的な骨欠損を有するようになる。また、根尖部下方の唇舌的骨幅が歯槽部よりも薄いケースもあり、その場合はインプラント治療がさらに困難になる。 既存骨内にインプラントの埋入を行う場合は、その埋入方向をCT画像で十分に精査し、ドリリング時は先端をパーフォレーションさせないように慎重に行わなければならない(図1)。Advance治療計画の基本的な考え方 下顎前歯部は上顎前歯部と同様に口元の審美性において重要な要素であるが、通常の生活で見える範囲は歯冠部のみで、歯頚部まで見えることはほとんどない。そのため、歯冠部が審美的に補綴されれば多少歯冠が長くても、あるいは歯間乳頭の欠落、歯肉付き補綴なども多くの患者において許容される。しかし下顎前歯部は、鏡の前に立って自分で下口唇を反転すれば容易に観察できるため、治療計画の時点で患者と十分に検討する必要がある。 そのため、筆者は金属や白色のアバットメントの露出あるいはポンティック下の空隙はないようにしている。また、補綴装置装着後の時間経過の中で、骨の吸収によってこのよう図1-a〜d さまざまな下顎前歯部のCT断層画像。歯槽部は非常に薄く、歯根の唇側壁、舌側壁の厚径は歯槽縁の下方5mmの部位で両壁とも平均0.6mm前後であり、根尖下方の下顎骨体部がさらに薄いケースもある。図1-e 歯槽骨の唇舌的幅径は、歯根部が凸出した形状をしていることが多く、歯根間ではさらにその幅径は薄くなる。dcba104Quintessence DENTAL Implantology─ 0948

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る