Quintessence DENTAL Implantology2021年No.1
6/9

(2)パノラマX線写真によるスクリーニング パノラマX線写真(図1)では診断というよりはあくまでスクリーニングという観点から表2の項目について確認を行う程度に留めておきましょう。下顎臼歯部においては、下顎管の走行やオトガイ孔の開口部の位置、欠損部位の顎堤頂から下顎管までの距離などは必ず確認してください。また、欠損部の骨内にガッタパーチャの取り残しなど異物やその他の病変がないかも確認必須です。また、隣在歯に補綴装置があればその適合や根尖病変の有無についてもチェックしましょう。明らかな根尖病変が認められる場合は、インプラント埋入に先立って感染根管治療を行い、治癒傾向にあることをデンタルX線写真などで確認した後、インプラント埋入を行います。(3)口腔内写真 口腔内写真を撮影する最大の目的は、患者への説明です。現在の口腔内の状況を患者自身が拡大されたモニタで確認することで治療の必要性を理解するとともに、治療への動機付けにつながります。また、口腔内検査で見落とした項目がないか、治療計画立案時に見返すことが重要です。日本口腔インプラント学会の専門医申請時にも必須の資料となるため、初診時に最低でも5枚法(図2)にて口腔内写真を撮影しましょう。(4)口腔内検査欠損部と欠損部周囲の状態 口腔内検査では、パノラマX線写真やCTなどでは確認できない軟組織やクリアランスなどについて確認を行うようにしましょう(図3、表3)。また、隣在歯の傾斜や骨隆起などX線の情報との整合性を確認しておくことも重要です。咬合状態 X線検査では診断できない情報、すなわち動的な咬合状態については実際の口腔内にて顎運動をしてもらい確認をしましょう(表4)。特に、アンテリアガイダンスの有無や咬合高径などについては包括的な治療計画が必要となる可能性もあるので、確認必須です。チェック項目対 応主訴・できるだけ具体的に把握する現病歴・なるべく時系列で詳細を把握する・抜歯した理由や抜歯後の経過年数によって骨の状態を推察する・特に抜歯前の状態においては、現在症状があるかないかを伺い、抜歯の判断は慎重に行う全身疾患や服用中の薬・必要があれば対診を行い、かかりつけ医の指示を仰ぐ・全身疾患がある場合は、投薬などによるコントロールの有無を確認する医科的既往歴・異常があった場合は詳細を聴取し、必要に応じて血液検査の実施や対診を依頼する歯科的既往歴(麻酔時や抜歯時)・異常があった場合は詳細を聴取し、必要に応じて使用する薬剤の変更などを検討する喫煙の有無・喫煙者の場合、タバコの種類や喫煙頻度を確認し、リスクについて説明する・できるかぎり禁煙を推奨する・喫煙者の場合、同意書にてリスクの確認や保証期間の短縮などについて説明する妊娠の可能性の有無(女性の場合)・妊娠の可能性がある場合は妊娠中の手術は避ける授乳中(女性の場合)・授乳の頻度や粉ミルクとの併用の可否などを確認し、周術期は投薬に注意する治療を受けるうえでの希望や優先順位・痛み・期間・費用・見た目・強度など患者によって希望や優先順位はさまざまなので、よく確認し患者満足度を意識した治療計画を立案する静脈内鎮静法の希望の有無・手術時に鎮静が必要か、あるいは希望の有無を確認する表1 問診時のチェックリストインプラント治療のための 骨増生テクニック超実践! 部位別インプラントの最新治療戦略Dr.高橋恭久の インプラント外科道場930093 ─Vol.28, No.1, 2021

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る