Quintessence DENTAL Implantology2021年No.2
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Basicはじめに 第1回は「局所麻酔の打ち方・切開の入れ方」をテーマに、患者の術前心理が全身状態に与える影響、局所麻酔は複数回に分けて行うべきであること、周囲麻酔と骨膜下麻酔の打ち方、切開の入れ方、とくにメス刃を45°角にて刺入し骨面から離さずに切開することなどをお伝えした。 第2回は、日常的に有効性が高いと筆者が考え実践している「切開法とフラップデザイン」について解説する。Basic切開線はどこに入れるべきか? インプラント外科手術でもっとも多く使用される切開が、歯槽頂切開である。 歯槽頂切開は、角化粘膜(不動粘膜)内にて切開された場合と、非角化粘膜(可動粘膜)内にて切開された場合とでは、後者のほうが術後に裂開しやすく縫合に細心の注意が必要である。裂開のしやすさは粘膜組織の厚みに影響される。角化粘膜どうしは厚みがあり創面は塞がりやすいが、角化粘膜と非角化粘膜、あるいは非角化粘膜どうしは薄く、また可動粘膜であるため術後の裂開に陥りやすい。症例1では、角化粘膜が少なめではあったが、粘膜骨膜弁に角化粘膜を確保することができ、1回法にすることでインプラントの頬側に角化粘膜を移動できた。 また、下顎第一あるいは第二小臼歯部位への近心縦切開は、その長さを歯肉‐歯槽粘膜境移行部までの範囲に留めておくことを推奨する(図1-d)。それ以上先へ切開を進めると、オトガイ孔から伸びるオトガイ神経を切断してしまい知覚障害を併発させる危険性があるためである。図2に示すとおり、オトガイ孔は決して1つとは限らず、高い確率で複数の副孔が存在する1)。 症例2では、歯槽頂から頬側にかけて角化粘膜が不足していたが、通常どおり歯槽頂切開を加えてしまった。この場合、縫合に細心の注意が必要となる(図3-b)。反省点としては角化粘膜内、すなわち口蓋側寄りに歯槽頂切開を加えるべきであったと言える。Basicインプラント外科手術で有効な粘膜骨膜弁形成法とは? 智歯や残根などの難抜歯、歯根端切除術、顎嚢胞摘出術などの口腔小外科手術では、口腔粘膜骨膜弁形成が必須であり、口腔外科手術の基本となる。 これらの手術に使用される切開法はさまざまあるが、Partsch切開法、Pichler切開法、遠藤切開法、Neu-mann切開法、Obwegeser切開法などが古くより知られている2)。その他、一字切開法、十字切開法、工字切開法、鎧状切開法、弓状切開法などが知られる。本稿では多くの切開線についての解説は割愛し、筆者がインプラント外科手術のためにもっとも有効であると考えるNeumann切開法に高橋恭久 Yukihisa Takahashi東京都開業:医療法人慈世会 高橋スマイル歯科一ノ塾 塾長切開法とフラップデザインDr. 高橋恭久の インプラント外科道場第2回スマホで動画を見よう(p.9参照)Movie96Quintessence DENTAL Implantology─ 0260

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