Quintessence DENTAL Implantology2021年No.2
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Advanceはじめに:上顎前歯部複数歯欠損におけるインプラント治療の基本的考え方 インプラント治療のゴールは、患者・術者双方が満足できる治療結果が得られ、その状態が長期に安定することである。そのためには、①適正なポジションにインプラントを埋入する、②適正な骨量を獲得する、③適正な歯肉を獲得することが重要である。そして、さらに上顎前歯部の複数歯欠損のインプラント治療は高い審美性が求められるため、これらの要素がより高いレベルで要求されることになる。特に骨量については、歯槽骨弓に調和した幅があり、歯間乳頭を支える高さがあることが必要になる。しかし、審美性の要求度は患者によって異なるので、偶発症の発生リスクや外科的侵襲などを考えながら、最小限の医療介入で患者が望む最大の治療結果が得られる治療方法を検討すべきである。Advanceインプラントの埋入と骨増生の時期 上顎前歯部のインプラント治療では、抜歯時には病的な骨欠損がなくても抜歯窩とインプラント体にはギャップがあり、抜歯前の骨幅を温存するには、何らかの内側性の骨増生が必要になると言われている1)。唇側に骨欠損がある場合はさらなる骨増生が必要になるが、これらの内側性の骨欠損の場合は、本連載の第1回2)にも記載したが、抜歯即時埋入と同時のGBRで対応できる症例やリッジプリザベーションによりGBRを回避できることもあるので、このような抜歯即時で対応できるケースは本稿では割愛し、中隔部の骨まで欠損し残存骨が2〜1壁のケースや垂直的に骨欠損がある症例で歯肉付き補綴が許容されない症例について考察していく。 抜歯即時か待時かの境界線は術者の考え方によって異なるが、骨の欠損がより複雑なケースや骨欠損をともなう高い審美性が要求されるケースなどは、抜歯即時で対応すると、抜歯窩があることで術野の粘膜封鎖が困難であり、また炎症やサイナストラクトがあると粘膜の裂開のリスクが高くなるため、より難度が高くなる。よってこのような場合は、まず抜歯を行い、軟組織が良好に治癒してから骨増生を行うべきであると筆者は考える。 待時で骨増生を行う場合は、軟組織が良好に治癒しており、かつ抜歯窩の骨壁が吸収する前、すなわち抜歯後4〜8週の早期埋入3)の時期が推奨される(表1)。表1 上顎前歯部の複数歯欠損におけるインプラント埋入と骨増生の時期歯頚部の歯肉レベル適正下がっている歯肉の状態健康な状態で厚い炎症や裂開があって薄い骨の欠損形態4〜3壁性骨欠損2〜1壁性骨欠損や垂直的骨欠損▼▼抜歯即時埋入+GBR早期埋入+GBR白鳥清人 Kiyoto Shiratori静岡県開業:医療法人社団 白鳥歯科日本口腔インプラント学会認定専門医インプラント治療のための 骨増生テクニック第8回上顎前歯部における複数歯欠損の骨増生104Quintessence DENTAL Implantology─ 0268

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