Quintessence DENTAL Implantology 2021年No.5
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第5回上下顎前歯部における治療指針と外科手術②  90Quintessence DENTAL Implantology─ 0750Basic上顎前歯部における審美的評価と術前処置についてのカウンセリング 上顎前歯部のインプラント治療に入る前に、上顎6前歯についての包括的審美的評価を行います。表1に挙げた項目を評価したうえで、理想的かつ包括的な治療計画を提案します(図1、2)1)。 評価項目におけるディスクレパンシー(不調和)を是正するためには、矯正治療・歯周形成外科治療・補綴治療による前処置が不可欠となります。特に矯正治療が必要となる場合は、インプラント治療に先立って矯正治療を行う必要があるため、インプラント治療に入る前に十分なカウンセリングを行ってから実際の治療へと進むことが重要です(表2)。最終形態のワックスアップの重要性 前処置を含めた包括的な治療計画の立案が完了したら、いよいよ前歯部の埋入計画を立てていきます。上顎前歯部のインプラント埋入でもっとも重要なのがインプラントポジションです。前歯部の理想的なポジションは、臼歯部と異なり、既存骨ではなく最終的なインプラント上部構造の位置から逆算して決定することは前号でも述べました。したがって、まず最終上部構造のインサイザルエッジポジション(前歯の切端の位置)と歯頚ラインをどこに設定するかを決定します。Basic 前回では前歯部におけるインプラント治療の基本的な考え方と下顎前歯部の埋入術式について述べましたが、第5回となる今回では上顎前歯部に焦点を当てて解説していきます。 上顎前歯部は、下顎に比べて審美的により目立つ領域であるため、硬組織だけではなく軟組織の欠損についても外科的および補綴的なアプローチが不可欠となります。術前検査時のリスクマネジメントやインプラント体の選択、治療ガイドラインについては前号で詳しく解説したので、本稿ではインプラントポジションと埋入およびGBR(骨再生誘導法)の手技を中心に、審美的合併症を最小限に抑えるインプラント外科手術について解説します。❶顔面正中と歯列正中の位置関係(正貌での評価)❷瞳孔間線と水平的な歯列の並行関係(正貌での評価)❸E-Lineの評価(側貌での評価)❹口元の突出感(Nasolabial Angle)の評価 (側貌での評価)❺歯頚ラインとスマイルラインの関係 (スマイルによる評価)❻左右歯牙の対称性(大きさ)の評価❼歯のアライメント(歯軸)の評価❽歯頚ラインの対称性の評価(正面観での評価)❾歯頚ラインの最深部の位置(ゼニス)の評価 (正面観での評価)表1 包括的審美的な評価項目丸尾勝一郎 KatsuichiroMaruo東京都開業:三軒茶屋マルオ歯科日本口腔インプラント学会認定専門医はじめに上顎前歯部治療における検討事項超実践!部位別インプラントの最新治療戦略

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