Quintessence DENTAL Implantology 2021年No.5
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第5回インプラント埋入②前歯部98Basic①まずは失敗から学ぼう! 筆者が過去に他院から相談を受けた前歯部のトラブル症例は、意外にもほとんどが1歯欠損部に対するインプラント治療である。また、筆者自身が手掛けて失敗に至り、リカバリーに苦慮した症例にも1歯欠損症例があった。それらのなかには、インプラント埋入部の粘膜退縮だけでなく、両隣在歯の周囲組織まで大きく喪失してしまったものもあった。1歯欠損症例に対するインプラント治療の失敗は、隣在歯の組織Basic これらはそれぞれに難しさが異なる。欠損歯数が増えればインプラント間距離や埋入位置への配慮が厳格さを増し、連続した欠損領域は水平的あるいは垂直的な骨喪失をともない、補綴と埋入位置とのズレが大きくなる可能性が高い。外科手技としても、GBR法による骨増生だけでなく、スプリットクレスト法(歯槽頂分割)やブロック骨移植、軟組織移植などの難度の高い手技の必要頻度が高くなる2)。 もちろん1歯欠損であっても、骨の萎縮が強い歯槽堤を有するような症例では、ブロック骨移植や軟組織移植が必要な場合がある。その判断を誤ると一気に失敗に至ることもあるため注意が必要である。欠損歯数が少ないからといって、1歯欠損症例はけっして簡単とはいえないことを強調しておく。そこで、本稿ではあえて前歯部1歯欠損症例を取り上げ、残存組織の着眼点や外科手技の選択について紹介する。Basic 第4回は「上顎洞底挙上術における側方/歯槽頂アプローチの使い分け」について解説し、ガイドラインを厳守して治療選択すべきことや、埋入後のインプラント周囲骨すべてのエリアが5mm以上の歯槽骨高さになると想定できる場合に歯槽頂アプローチが可能となることなどについてお伝えした。 今回は「インプラント埋入②前歯部」とし、硬組織の外科手術について紹介したい。前歯部のインプラント治療は欠損歯数によってその難易度も特徴もそれぞれ異なる。また、インプラントポジション、インプラント間距離、硬組織移植、軟組織のマネジメント、上部構造の形態と周囲粘膜の維持など、審美的な要件を満たすためにさまざまな治療選択を必要とされるエリアである1)。これら膨大なテーマが存在するなか、本稿においては上顎前歯1歯欠損症例に絞り、これから前歯部を手掛けようとされる先生方に向けて、前歯部特有の欠損部顎骨形態から考える外科手技の選択と注意点についてお伝えする。 前歯部のインプラント外科手術は、まず欠損歯数によって分けて考えると良いだろう。すなわち、1歯欠損、2歯欠損、そして3歯以上の欠損の3種類の欠損パターンである。スマホで動画を見よう(p.13参照)Quintessence DENTAL Implantology─ 0758Movie高橋恭久 Yukihisa Takahashi東京都開業:医療法人慈世会 高橋スマイル歯科一ノ塾 塾長はじめに前歯部に対するインプラント外科手術の難しさ─欠損部顎骨形態から考える外科手技─前歯部1歯欠損症例Dr. 高橋恭久の インプラント外科道場

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