Quintessence DENTAL Implantology 2021年No.5
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第11回天然歯を含む全顎治療における骨増生108Quintessence DENTAL Implantology─ 0768AdvanceAdvanceAdvance Brånemarkらは、オッセオインテグレーテッドインプラントの応用を無歯顎患者からスタートしたが、その後の長期的に良好な臨床成績1、2)にともない、臨床先行的に小数歯欠損患者にもインプラント治療が臨床応用されるようになっていった3)。当初は、インプラントと天然歯の被圧変位量の違いからインプラントへは保護的な咬合が推奨されたが、良好な長期経過の報告から徐々に積極的な咬合が付与されるようになっていった4)。 そして、小数歯欠損患者におけるインプラントの良好な長期予後は、残存歯の良好な長期予後につながり、インプラントと天然歯は共存し、相互に補完することで良好な口腔機能の維持と審美性の回復につながるようになってきた。 歯の欠損を有する全顎的な治療では、まず口腔機能の維持、つまり、咀嚼や発音などの口腔機能の回復と長期安定のための顎位の安定と適正な咬合付与が求められ、そのためにインプラント治療を計画し、ショートインプラント、傾斜埋入や埋入部位の変更などでも対応できない時に骨増生や軟組織の治療を計画する(図1)。 審美的な要求に対しては、患者の希望レベルに合わせて慎重に検討する必要がある。 まずは、可能なかぎりグラフトレスの方向から考え、どうしても骨増生や結合組織移植などの付加的な外科が必要になる場合は、極力低侵襲な方法を選択すべきである(図2)。 今回は、小数歯欠損で、臼歯部の咬合支持の崩壊、喪失により力学的な不均衡が生じている患者に対して低侵襲なサイナスリフトで対応した症例と、審美領域の歯の喪失により著しい審美障害が生じている審美的要求の高い患者に対して骨増生とインプラント治療を行い、全顎的な機能と審美の回復を図った症例を提示し考察する。白鳥清人 Kiyoto Shiratori静岡県開業:医療法人社団 白鳥歯科日本口腔インプラント学会認定専門医はじめに治療計画の考え方症例供覧症例1:臼歯部欠損に対して歯槽頂アプローチの上顎洞底挙上術とインプラント治療によりバーティカルストップを確保した症例 患者は、初診時56歳の男性。精神科の医師で、歯科には部分的な応急処置以外、20年間ほど受診・治療していないということであった。主訴は、臼歯部の歯の喪失にともなう咀嚼障害であったが、最小限の医療介入で長期の安定を希望した。 初診時の状態を図3〜5に示す。左側上顎臼歯部の歯の喪失と右側上下顎臼歯部の補綴装置の破損、脱離により、咬合高径の低下とともに前歯部の残存天然歯は摩耗し、全顎的な機能崩壊寸前の状態であった。 患者は、長期に口腔機能が安定する全顎的な治療を希望しインプラント治療のための 骨増生テクニック

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