Quintessence DENTAL Implantology 2022年No.1
6/9

第1回インプラント治療に必要な実践的手術解剖の知識:概論本連載の概要 歯科インプラント治療は歯の欠損の補綴治療法の1つとして広く普及している。しかし、インプラントを埋入する顎骨は個人差に加え、歯の喪失による変化も大きく、解剖構造の安易な評価は思わぬ合併症をまねく。われわれが大学で習った解剖学は、正常な個体の解剖である。実際の臨床での加齢や歯の喪失による変化はさまざまで、その評価は個々の臨床家が患者を診察して把握する必要がある。インプラント治療でもっとも多く発生する下顎での合併症は下歯槽神経の損傷で、上顎では上顎洞へのインプラント迷入と上顎洞炎である。さらに重篤な合併症は口底血腫であり、致死的状況に至ることが知られている。また骨増生を併用する場合には創傷治癒不全も重大な障害を残す。本連載ではインプラント治療を行う際に目の前の患者の解剖構造をどう評価すべきか、リスクの有無の判定と手術における対応を示したいと考える。第1回 インプラント治療に必要な実践的解剖知識:概論第2回 下顎臼歯部へのインプラント埋入に必要な実践的手術解剖第3回 下顎前歯部〜小臼歯部領域へのインプラント埋入に必要な実践的手術解剖第4回 上顎洞底挙上術時に必要な実践的手術解剖第5回 自家骨採取時に必要な実践的手術解剖第6回 画像診断から読み解く実践的手術解剖94Quintessence DENTAL Implantology─ 0094Basic(1)インプラント手術部の骨について 歯科インプラント手術部の骨は、言わずと知れた歯が植立していた上顎骨と下顎骨である。この2種3個の骨は、15種23個の骨が連結して作られた、頭蓋(骨)において顔面頭蓋(9種15個)もしくは顔面骨(5種8個)に属している。上顎骨は線維性の連結、すなわち縫合を主とした骨の連結で、頭蓋骨(前頭骨・鼻骨・篩骨・涙骨・蝶形骨・鋤骨・下鼻甲介)や他の顔面骨(頬骨・口蓋骨)と連結し、下顎骨は滑膜性の連結、すなわち頭蓋唯一の可動性の連結である顎関節で、頭蓋骨もしくは脳頭蓋に属する側頭骨と連結している(図1)。(2)上顎骨の形態 骨の形態分類では含気骨や不規則骨に属し、頭蓋の分類では顔面骨に属する上顎骨は、垂直的に顔面の中央に位置するBasic福岡歯科大学生体構造学講座機能構造学分野 准教授連載をはじめるにあたってインプラント治療の骨学インプラント臨床に役立つ実践的手術解剖松浦正朗 Masaro Matsuura児玉 淳 Jun Kodama福岡歯科大学名誉教授日本口腔インプラント学会認定指導医

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る