QDT4月
6/8

はじめに 昨今の審美歯科治療における、オールセラミックレストレーションの適応範囲は拡大するばかりである。その要因として、光透過性にすぐれた高強度のセラミックマテリアルや、物性の安定した専用レイヤリングマテリアルの進歩、また、CAD/CAMによる加工技術の目覚ましい発達が挙げられる。中でも、ジルコニアレストレーションはすでに臨床応用から10年が経過し、審美歯科治療のオールセラミックス化を牽引してきた。 われわれ臨床家がオールセラミックスを選択する際にもっとも期待することといえば、メタルセラミックスでは光学特性上難しい、明るく透明感のある天然歯の再現である。現時点においてフルカントゥアジルコニアでは審美性に限界がある。オールセラミックスの特性を最大限に引き出すためには、コアマテリアルにジルコニアを使用し、その上に専用の築盛用陶材を焼き付けて歯冠回復するジルコニアレイヤードクラウン(以下PFZ)が未だ最適であろう(図1)。 基本的に築盛用陶材を用いての歯冠色の再現工程は、歴史あるメタルセラミックレストレーションのそれと何ら変わりない。しかしながら、同様に築盛したとしても結果がともなわないことがある。それは、支台歯の変色やメタルポストアンドコアなど、支台歯色の影響を受けるためである。場合によっては、意図していた色調を得られず、頭を抱えることも少なからず経験する。 過度の変色支台歯やメタルポストアンドコア装着歯でさえも、厚みが0.6mm以上のジルコニアコーピングを用いれば、マスキング材は不要と感じている。しかし、筆者の臨床経験上、0.6mmをコーピングに費やし、残りの限られたレイヤリングスペースでコーピングの反射を抑えつつ色調再現するのは難易度が高いと考えている。ジルコニアマテリアルも透過率が上がってきており、そのバリエーションも豊富で、同じ0.6mmでも遮蔽率が変化してしまうためである(図2)。よって、一定のコーピング上に一定のマスキング材を使用するほうが安全である、というのが私見である。 そこで本稿では、PFZ製作において筆者が経験したマスキング材使用時の失敗と試行錯誤、マスキング材使用時の問題点を改善するための各築盛用陶材の厚みと築盛構造、それらを可能にする支台歯形成量の相互関係について、症例と実験を通して明確に提示したい。KATANA支台歯KATANAHT図1a、b 両側中切歯(a)、右側中切歯(b)のPFZによる補綴症例。図2 メタルポストアンドコア上に試適したジルコニアコーピング。同条件でも透過率はまった違うことが確認できる(コーピングは0.6mmに調整。左:KATANA〔クラレノリタケデンタル〕、中:支台歯、 右:KATANA HT)。ab

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です