QDT 2014年6月
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残存歯にやさしいパーシャルデンチャーを考える ―「三次元構成義歯」とは何か?― 街の開業医を長く続けていると、「先生、私はそんなに長く生きないから、歯にはお金をかけたくないね……」という声を耳にすることがある。だが、そんな患者さんに限って、10年経ってもチェアサイドで義歯の調整をしながら、そのときの会話を笑い話にすることも最近では少なくない。 超高齢社会を迎えた今日、定年の延長や定年後の社会参加、生活様式が目ざましく変化している。必然的に、「より質の高い咀嚼と審美的要求」そして「健康志向」が限りなく追求されるようになってきている。こうした社会背景は歯科治療、とくに補綴治療に強い影響を与えることになる。 欠損補綴の目的は、クラトビル(Kratochvil、1963年)の時代に要求された残存歯列、残存歯の保護、保存を第一とする思想1(可撤式パーシャルデンチャー)から、口腔機能および審美の回復を第一とした思想(インプラント)へ変更が迫られる結果となっていった。 しかし、怒涛のような、いわゆる「インプラント時代」も落ち着きをみせ、現在ではその反省点も浮き彫りになってきている。患者さんの経年的に変化する全身状態や経済的背景、また在宅医療におけるメインテナンスの問題などが山積する中、すべてをインプラントでカバーするのも無理がある。とくに残存歯があり、歯列の中で補綴修復物と混在する場合には、将来的に補綴設計の変更を余儀なくされる場合がある。また欠損の原因が歯周疾患による場合、歯周病原因菌の存在が隣接するインプラントへ与える影響も否定できない(図1)。 今後は、部分欠損修復に対して、多角的なアプローチが必要になってくる。つまり固定性補綴ばかりでなく、補綴設計の変更が可能な可撤式補綴の選択肢も先生方の治療のオプションに必要不可欠と考える。そこで本稿では、筆者が学んできた「三次元構成義歯」の紹介を軸に、今この時代にこそ求められる「動かないパーシャルデンチャー」「残存歯にやさしいパーシャルデンチャー」について考えていきたい。はじめに■増加するインプラント周囲炎への対応は……図1 他院から転院。インプラント周囲炎により、排膿がみられた症例。決して、欠損イコールインプラントではない。

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