QDT 2014年6月
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Brush Up! Dental Technician with Dentist精度の高い補綴臨床を目指して 前編はじめに 調整のいらない補綴装置を製作するためには、数々の工程をミスなくクリアする必要がある。その工程は、チェアサイドにおいては、診断・支台歯形成・印象採得・石膏流し・咬合採得などが挙げられ、ラボサイドにおいては、石膏流し・作業用模型製作・咬合器装着・補綴装置製作などが挙げられる。補綴装置の調整をなくすためには、これらの工程が重要だと当たり前のように言い続けられている。しかし、見た目に支台歯形成・印象・咬合採得・作業用模型に不備があるものは論外として、一見問題のない印象や作業用模型で補綴装置を製作しても、口腔内である程度の調整を強いられる。そのため、口腔内装着時には調整ありきというのが通例となっている。 そもそも、なぜこれほどまでに補綴装置を口腔内に装着する際に無調整もしくは調整を少なくすることが求められ、実現するための努力が行われているのか。それは何よりも生体における現状の咬頭嵌合位を狂わせないためである。生体における咬頭嵌合位は患者の生活環境や生活習慣により、歯牙移動などが起因して時間とともにゆっくりと変わっていくものではある。しかし、補綴装置のわずかな復位の違いや口腔内で行われる咬合調整により、咬合接触位置や接触強さが変わってしまうと、咬合器上で作り上げた咬頭嵌合位が変わってしまい、生体における咬頭嵌合位を狂わせてしまう。このことにより、補綴装置の破損や残存歯牙、さらには生体にまでも悪影響を及ぼしかねない。 そこで著者は、パートナーシップとして補綴治療を行っている歯科医師の方々と、歯科医師と歯科技工士の間にある模型の変形や咬合採得に対する認識の差異をなくし、お互いに理解を深めることで、無調整装着の具現化を目指している。本稿では、無調整装着ができない原因を考察し、無調整装着を実現するために必要な情報を可視化していきたい。 なお、本稿を読んでいただく際には、QDT Art & Practice 2013年11月号「The Piece of Dental Technology―明日につながるワンポイントテクニック―」(以降、前稿)を並べて読んでいただくことで、より理解が深まると思われる。9999QDT Vol.39/2014 June page0897

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