QDT9月
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はじめに 本稿では、「デジタル技術を応用した矯正診断と治療の優位性について」というテーマでデジタル矯正治療の現在について解説をしたいと思う。具体的コンテンツとして、デジタル技術が矯正治療に導入されてきた経緯、デジタル技術が矯正治療システムをどのように変化させ、恩恵を与えているのか、2014年現在のデジタル矯正治療の最新情報についてお伝えすると 近年、デジタル技術は著しいスピードで開発・発展・普及しており1-4、2014年の時点でデジタル技術が応用されている工業製品は、われわれの身の回りに溢れている。修復歯科領域では、1980年にチューリッヒ大学のMörmann教授によってCAD/CAM システムを応用した短時間で精度の高い修復物製作システムが発案され、現在ではシロナデンタルシステムズ社よりCERECの製品名4で、インレー・クラウン修復に広く臨床応用がなされている(図1)。 矯正歯科の分野では、デジタル技術応用の先駆けとして1997年に米国・Align社により、患者の口腔内模型スキャンデータから熱可塑性樹脂製のアライナーをともに、筆者が採用しているデジタル技術を応用したFull Digital 舌側矯正装置「Incognito システム」(3M Unitek,スリーエムヘルスケア)開発の意義から実際の臨床での治療効果、バイオメカニクス特性についてフォーカスをあて、デジタル技術と矯正治療のコラボレーションの現状と将来の展望について述べていきたいと思う。1.歯科矯正治療へのデジタル技術の導入の経緯■すでに進む歯冠修復領域でのCAD/CAM化■デジタル技術を応用した矯正治療システム図1 CAD/CAMシステムにより製作されたクラウン(本図はSirona Dental Systems GmbH資料より引用)。図2 欧米各国の、デジタル技術を応用した矯正治療システムのブランド各種。製作、患者に装着させることにより歯の移動を行い、不正咬合を改善する可撤式デジタル矯正治療システム5Invisalignが考案された6。 2013年の時点で、世界中で延べ300万人以上の患者がInvisalignによる治療を受けている。その後、固定式矯正装置の分野では、Incognito システムをはじめとして、Sure Smile、Harmony、DW Lingual System など多くのデジタル技術を応用した矯正システムが発表、臨床実用化されてきており(図2)、日本国内においても実際に臨床導入がなされている。

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