QDT 2016年8月
2/8

下顎総義歯のリライン -とくに軟質材料によるリラインについて-1919はじめに1下顎総義歯のリラインの適応 内閣府の発表によると、平成27年には65歳以上の人口の割合(高齢化率)が26%に達し、世界に例をみないスピードで高齢化が進んでいる1。内閣府の予想では、平成72年(2060年)には、高齢化率が39.9%に達し、75歳以上の人口は26.9%となり4人に1人は75歳以上という、人口構成自体の大きな変化が予想されている。医学の進歩により、平均寿命は延びたものの、健康寿命との差は男性で9年、女性で13年あるといわれており2、この年数の間に何があるかというと、自立度の低下や寝たきり、認知症などを原因とした要支援・要介護の状態になってしまっている。約10年間もの介護生活により歯の脱落、クラウン・ブリッジの脱離、不適な義歯の使用による顎堤の異常吸収など、今後さらなる試練がわれわれ歯科医療関係者を待ち受けている 義歯治療の経験があまりない先生方の多くは、「柔らかい材料でリラインさえすれば大丈夫」と誤解している。そのため、総義歯患者の「痛みが消失しない」「外れる」「噛めない」などの訴えに対して、粘膜調整材(ティッシュコンディショナー)の使用がずっと繰り返されることとなっている。 実はこうした場合、いちばんの問題は義歯の形態や咬合高径、水平的咬合位、人工歯の排列位置などにあることが多い。基本的には、その時点で患者が使用していた義歯に何か問題があって診療をすることが通常だが、まず行うべき対応としては新製をするか、修理やリラインを行うかという判断である。 その際に、考慮しなければならないことが2つある。ひとつは、現在使用中の義歯が今後も使用できるものかどうかということ、そして2つ目は、その患者の状ものと考える。そのような状況でも最後まで美味しく口から食べるということに、われわれは全力を傾注していくべきであろう。 義歯に関しては、「上顎は何とか入れていられるけれど、下顎は痛くて入れられない」「はずれてしまうから入れられない」と訴える高齢者が多くいる。こうした訴えに対し、技術の向上で難症例に対処できるようになるべきではあるが、それでもどうしても困難な症例がある。そのような患者に対し、平成28年度の診療報酬改定により保険収載された軟質リライン材を適用することで、笑顔で食事を楽しめるとなれば高齢者歯科医療にとってひとつの福音となるだろう。拙文がその一助となれば幸いである。態(年齢、全身状態、通院の可否、これまでの義歯の経緯など)がどういう状況かということである。以下、それぞれの要因について考える。①現在使用中の義歯の評価 現在使用中の義歯が、粘膜面の適合を改善すること義歯新製を考慮する要件使用中義歯のチェックポイント□咬合高径や水平的顎間関係に大きなズレがある□人工歯の排列位置に大きな問題がある□極度な人工歯の咬耗がある□同じ部位の破折を繰り返している表1 使用中の義歯をチェックした上で、義歯新製を考慮する要件。QDT Vol.41/2016 August page 1065

元のページ 

page 2

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です