QDT 2017年11月号
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33デジタルデンティストリーに適応した低侵襲フルマウスリハビリテーション33 近年、修復治療においては“Retention & Resistance”という長期既存の概念から脱却しMinimally Invasive Intervention(MI)という原則の浸透が世界的に顕著である。それは接着技術の進歩や歯のバイオメカニクスの解明によるということのみならず、修復治療が目指すべきゴールは本質的に生体模倣(バイオミメティック、バイオエミュレーション)にあるという治療プロトコールのアップデートに他ならない1。前歯においては2002年にMagne PらがBPR(Bonded Porcelain Restorations)の適応症を拡大整理して以来2、筆者を含め数々の臨床家がそれらの予後良好な経過症例を発表している3、4。その後、臼歯においても侵襲的なクラウン修復を避けMIに立脚した直接および間接法の接着修復がMagne P5、6、Dietschi D7らにより研究され行われるに至った。その結果Duarte S8、Fradiani M9、Vailati F10、Okawa M11など多くの研究者・臨床家により低侵襲フルマウスリハビリテーションの症例報告がなされている。そして、さらに良好な結果を得るためのクリニカルワークフローやマテリアルなどがアップデートされ続けている12。さらに筆者はMI修復治療の各ステップにマイクロスコープを用いることによりテクニカルエラーを可及的に防止し臨床的に良好な結果を得ている13。 また現在、デジタルデンティストリーへのパラダイムシフトの中で、低侵襲フルマウスリハビリテーションのトラディショナルワークフローに、どのようにしてデジタルデンティストリーを有効的に融合させる14ことができるかが重要なディスカッションポイントとなってきている。今回、これらを踏まえて低侵襲フルマウスリハビリテーションの酸蝕症治療症例を通して様々な考察をしたので報告したい。 前述したように筆者はMI修復治療にマイクロスコープを用いることにより良好な臨床的予後を得ているので前歯BPRの一症例を紹介したい。特に修復物の歯肉縁上マージンは9年長期経過時においても術直後と比較して安定しており辺縁漏洩やチッピングなどによるマージン部の変色は認められない。この症例に限らずマイクロスコープの拡大視野下において精密治療を行ったBPRおよびBCR(Bonded Ceramic Restorations)修復において、マージンをエナメル質内に設定し、また修復歯のたわみが少なく、かつ修復歯に過度の咬合力がかかっていない症例においては本症例と同じように中長期的経過において歯肉縁上マージンの変色が認められない症例が多くみられる(図1~6)。 筆者は本症例の修復治療当時、デジタルデンティストリーとは無縁であったが、ある意味マイクロデンティストリーは拡大視野のもと、修復治療に高い精密性をもたらしテクニカルエラーを防止するという意味においてコンベンショナルデンティストリーとは一線を画すものと考える。それにより術者には歯科治療のクオリティーに対して妥協することを許さない。当然デジタルデンティストリーも同じ価値観の延長線上にあるべきであり、患者の為にも治療結果において妥協を許すものであってはならない。そこで本論文においはじめに間接法MI修復治療における臨床的到達点QDT Vol.42/2017 November page 1685

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