QDT 2018年3月号
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4040三宅宏之 Hiroyuki Miyake歯科医師・三宅歯科医院宮城県石巻市千石町4‐39 「歯周補綴」なる用語を初めて聞いたとき、歯周組織に対して優しい形態をもつ、あるいは清掃性が良い補綴装置をイメージしたが、逆に歯周組織に良くない補綴装置・補綴治療となっている場合が多く、これはいったいどうしたものかと考えたことがある。当然であるが、補綴装置は歯周組織に配慮した清掃性が良い形態をもつことが望ましく、あえて「歯周補綴」なる単語が必要であろうか? と考えた。 これに対し、歯周病学用語集1には「歯周補綴(periodontal prosthetics):歯周炎の進行により生じた動揺歯や欠損歯を含む症例において行われる口腔機能回復のための補綴処置。支台歯、残存歯の歯周組織の維持を重視し、とくに清掃性の良好な形態や機能時に生じる応力の配分に考慮する」という定義が示されている。当然、「清掃性が良好な形態」はすべての補綴治療において考慮されるべき条件であるため、歯周補綴という用語がとくに意味するところは「機能時に生じる応力の配分に考慮する」ことで、歯周組織が破壊された支台歯・欠損歯列を保護するということであろう。 そこで本稿では、筆者が歯周病治療と補綴治療を両輪で行ってきた経験の中から、歯周組織に対して為害性のない補綴装置・補綴治療とは何か、その姿について考察していきたい。はじめに補綴治療と歯周組織との関係を再考する―主に清掃性と形態について―Feature article #1QDT Vol.43/2018 March page 0372

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