QDT 2018年3月号
8/8

119第5回 印象採得と床縁設定について 2印象採得は上顎と下顎ではまったく逆 その印象採得についてであるが、部分床義歯においても義歯床辺縁形態であるボーダー印象採得については「印象は上顎と下顎ではまったく逆である」という概念をしっかりと覚えていただきたい。いずれも筋圧形成を行わなければならないことに違いはないのであるが、その方針はまったく別であり、正反対な方向となるということである。まず、下顎は筋肉や粘膜が緊張した状態で採得する。要はグッと食い縛ったり、各部の筋肉を活動させたりした状態で採得するのが下顎の印象である(図2)。 一方、上顎の印象は筋を弛緩させた状態で採得する(図3)。これは全部床義歯でも部分床義歯でも共通のとなる。部分床義歯補綴治療時においても、歯科衛生士の力を借りたい局面は多く、いかに有能な歯科衛生士とともに働くかは補綴臨床家にとっての将来を決定づけるひとつの重要事項といえると考えている。下顎の印象は筋肉が収縮した状態で採得する上顎の印象は筋肉が弛緩した状態で採得する図2 下顎は、機能する時に筋縮しその時の床縁の位置が適正な長さとなり、咀嚼時に干渉しづらくなる。図3a、b 適正な上顎義歯の床縁の位置。図3c 口角や上唇を上方に持ち上げるようにすると床縁は少し長くなってしまい、このような状態で印象採得すると床縁は干渉してしまう。図3d 上唇や頬粘膜を稼働させる筋肉がもっとも弛緩した状態の床縁の長さが適正な位置となる。abcd119QDT Vol.43/2018 March page 0451

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る