QDT 2018年4月号
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99第6回 印象採得と床縁設定について(その2)るためである。 また、前回紹介した孤立歯に対する補強なども、印象体から石膏模型を撤去する作業をする歯科技工士に依頼するほうが確実である。孤立歯を含むトレーの模型からの撤去時にはトレーをすべて分解するのがもっとも確実であるが、思い切ってトレーを分解せずに撤去して孤立歯部を破折してしまう例が存在する。瞬間接着剤で補修すれば良いとの声も聞かれるが、それではわれわれが求める部分床義歯の印象採得精度を得ることはできない。ここは歯科技工士に依頼するべきである。また、孤立歯のあるような症例では印象体を口腔内から撤去するときのことを考えてシリコーン印象材の厚みを確保すべく個人トレー製作時においてブロックアウトを十分な量と範囲で行っておくこともすでに述べたとおりである。 さて、寒天・アルジネート連合印象採得でもシリコーン印象と同等の精度が得られると述べたが、そのためにかならず必要な操作がある。それは、すべての残存歯に寒天を巻きつけるという一手間である。面倒ではあるが、寒天・アルジネート連合印象で精度を得るためには必須事項であり、避けることのできない工程である。しばしば、寒天・アルジネート印象は寒天の品質が精度に影響するという言説がみられるが、現在においては筆者はそうは考えていない。温度管理を確実に行った上で、なおかつちぎれにくい製品さえ選択すれば、無理に高価な商品を選択する必要はないと寒天のストレージ温度は62~65℃に!筆者が現在使用しているアルジネート印象材と、「風入れ」ab図1 寒天のストレージ温度は62~65℃にしておく。図3a、b アルフレックスデンチャー(a、本図はモリタ社資料より引用)は、使用前にしっかりと容器の中で撹拌し、俗にいう「風入れ」をしっかりと行った後に使用することが材料特性を引き出すためのコツである(b)。図2 ストレージ温度が低いと寒天印象材とアルジネート印象材の相溶性が失われて分離してしまう原因となる。風入れ前風入れ後99QDT Vol.43/2018 April page 0625

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