QDT 2018年5月号
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第1回 基礎概念と天然歯からの学び 前歯部修復における審美の獲得は、決して容易な道のりではない。それは個々の理想美のかたちが優先されつつも、解剖学的なバランスに則った左右の対称性が極めて重要視されるからである。そもそも、修復治療に至る原因を辿ると主として4つの問題(う蝕・歯冠破折・歯周疾患・欠損)が挙げられるが、これまでの臨床経験上それらの原因にはあるひとつの共通点が存在している。それは、修復条件に対合歯を含め元来より歯の位置関係に何らかの不正が認められるということである。もちろん、臨床的な程度は異なるものの、不正の割合が増えるほど術前環境としては悪化し、修復の難易度も高くなる。そのため、前歯部修復とは臼歯も含め歯列に何らかの機能的な問題を抱えているケースが多いように感じている。 そして、その中でもより高い修復結果を得るためには、包括的な目線で環境改善を図る必要があり、いかに的確な補綴前処置が行われるかが審美性にも大きく影響する。そして、歯肉審美の獲得にはチェアサイドとの連携が必須となり、一枚の青写真からいかに審美的要素を高めていくかが、審美修復治療の醍醐味だと言えるだろう。1.歯肉審美の重要性The Practice of Comprehensive Approach in Pink EstheticsPink EstheticsOrthodonticsImplantProstheticsHard Tissue AssessmentSoft Tissue AssessmentPeriodontal Plastic SurgeryExamination & DiagnosisDental CariesTooth FracturePeriodontal DiseaseTooth Defect図1 修復治療に至る理由として主に4つの問題(う蝕・歯冠破折・歯周疾患・欠損)が挙げられる。また、これらの因子は複合的に合併されることも多くある。図2 歯肉審美を獲得するための治療コンセプト。まずは的確な術前診断の後に、歯列レベルの機能改善や歯周トラブルなどの根本となる問題を解決することが重要であり、包括的な治療アプローチによって歯冠同様に歯肉の審美性を引き上げていく必要がある。119QDT Vol.43/2018 May page 0803

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