QDT 2018年6月号
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37PLVエキスパートへの道:まずはここから37はじめにPLVを選択する目的とその適応症 近年、MI(ミニマルインターベーション)の考えに則り、日常臨床でポーセレンラミネートベニア(以下、PLV)による修復治療が選択される機会が増加している。また、患者側もPLVの存在を認知して、歯牙切削量をできるだけ減らすことを希望し、安易に全部被覆冠を選択することも少なくなってきている。このような背景から、わが国では1980年代より臨床応用されるようになったPLVは、現代の一般開業医にとって必須の修復方法となっている。 今日の接着技術の(とくに象牙質への)向上により、PLVの適応症は拡大している。修復治療において、PLVの適応を考慮するにあたっては重要な因子がある。それらを目的の側から大別すると、①色調の改善、②形態の改善、③実質欠損の回復、の3点が挙げられ、適応の可否を判断するためのポイントは、①対象歯の色調、②対象歯の形態、そして③対象歯の実質欠損の大きさ、の3点となる。以下に、それぞれの目的とPLV適応のための考慮事項について示す。①色調の改善:対象歯の色調 歯牙の変色はさまざまな因子が原因で起こる。それらは主に、先天的なもの(元来の歯牙の色調など)と、後天的なもの(テトラサイクリン系抗生物質による変色、歯冠修復物による着色など)に分けることができる。ただ、PLVを選択する前には、その歯牙の色調改善をホワイトニングまたはコンポジットレジン(以下、CR)直接修復で行うことが可能かどうか、つねに考慮すべきである。ホワイトニングでは、基本的には重度 ただ、いまだに多くの臨床医の心の中からは、PLVに対してチッピングのリスクやマージンの着色、そしてPLV自体の脱離といったマイナスのイメージが払拭できていないと思われる。しかし、そういった事態は誤った接着操作や咬合関係の検査不足に起因するものであり、PLV自体が問題のある修復技術というわけでは当然ない。そこで本稿では、PLV修復を成功に導くために必要なステップを説明していく。の歯牙の着色は改善できない。また、CR直接修復では広範囲にわたる修復治療は行うことが困難である。このことをふまえると、PLVでの色調の改善は重度かつ広範囲の変色歯がもっとも適応と考えられる。しかし、重度の変色歯の場合、PLVにも強いオペーク層を付与する必要が生じるため、審美性もやや落ちてしまう。②形態の改善:対象歯の形態 歯牙の形態の不調和には、矮小歯、歯間離開、咬耗、ブラックスペースなどさまざまなものがある。これらの中でもとくに矮小歯やブラックスペースの改善はPLVの適応である。 矮小歯、ブラックスペースの改善ともにCR直接修復の適応症であるが、矮小歯は近遠心的に大きく修復する必要がある場合が多く、強度的な問題が生じる。また、ブラックスペースを改善する場合は修復物のマージンラインが歯肉縁下に設定されることが多く、防湿およびCR築盛の困難さがともなうことから、QDT Vol.43/2018 June page 0887

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